2011年6月7日火曜日

お店のホームページを作るということの全体像

先般、OpenTableの手嶋社長のセミナーで聞いた話の中に「消費者は飲食店を選ぶときに口コミを大いに参考にしているが、最終的な意志決定はお店のホームページを見てから、という場合も多い」という言葉がありました。

私自身の行動を振り返っても、店のHPを見ずに行く/行かないを決めると言うことはありません。また、OpenTableがあるということは予約をその場で確定できるということですから、「思い立ったが吉日」な方を取り逃がさないような機能を持っているということです。

しかしながら、HPまで見込み客を連れてくるのは必ずしもOpenTableではなく、食べログ、ブログ、Twitter、facebookなどの口コミデータも送客機能として重要でしょうし、何と言ってもホームページ自身が魅力的なもので無ければなりません。

このブログでも今までホームページの重要性を間接的に述べてきましたが、一度、自分なりにホームページを作るということがどういうことか簡単にまとめてみようと思い、このエントリーを作るに至りました。

以下の表はホームページ制作というWebによる集客施策が十分に機能するためにどのような要素で構成されているか、またそれぞれがどのように機能することが期待されるか、などをまとめたものです。

Web集客施策 内容 一般的な費用 一般的な期待効果
大項目 中項目
ホームページ制作/リニューアル コンセプト明確化 ホームページ制作にかかる大前提としてお店の料理やベバレッジ、サービス、経営のコンセプトを再確認・定義し、関係者間で共有する。深く掘り下げて考えるべき要所。


コンセプトは論理的で、かつ周囲の利害関係者が納得できるものである必要がある(単に独善的なものであってはダメ。賛意者・ファンがいなければならない)。


参考エントリーはこちら
いわゆるコンサルタントが関与し易い分野であり、標準的な価格は無いと言っても良い。


必ず見積もりを取り、何をどこまでやってくれるのか、具体的な成果物があるかどうかなどを確認する必要がある。


また、相見積もりを取ることが望ましい。
これにより、料理やサービスの現を見直し、よりこれらをコンセプチュアルなものに昇華させることができるようになる。


また、ホームページに記載するテキストや画像に求める質、表現の方向性を確認し、ホームページ制作業者と共有できるようになる。
デザイン・制作 ホームページの制作と一言で言っても、実際には右記のように多くの要素から構成されており、それぞれを専業とする企業・人が居る(逆に言えば、言われた通りに作るだけの業者も存在する)。


それぞれの専業者に依頼すれば、安く仕上げられる可能性があるが、各要素ごとの品質にバラつきが生じる恐れもある。また、各業者に対して個別にコンタクトする手間は依頼主にとって負担大。業者から意に沿わないたたき台が提出されると、その修正にも手間がかかる。


全体のイメージがどれだけ具体化されているか(=コンセプトが明確になっているか)がこの工程での成果物の品質を左右する。
費用は正にピンからキリまで。安いのにも高いのにもワケがある。安いからと飛びつかず、必ず相見積もりを取って比較することが重要。


少し古いデータですが、こちらもご参考までに。


●ページ構成
・コンテンツ企画
自前の場合、10万円前後


・依頼主に具体案が無い場合、10万円~30万円前後


●ページ制作
・Topページ:3万円~10万円
・他ページ制作:1万円~5万円/ページ


●画像制作
・ロゴ作成:3万円~5万円/点
・写真撮影:1万円~3万円/点
・動画・CG・イラスト:1万円~10万円/点


●コンテンツライティング
・コラム、エッセーや用語集、翻訳が必要な場合など:2万円~5万円/A4ページ


(例えば、ワインリストなどでPuligny Montrachetをピュリニー・モンラッシェとふりがなを付けるのにも通常は別料金が必要)
・店が消費者に伝えたいコンセプトとコアバリューを十分なボリュームで伝えることが出来るメディアであると言える。


・より多くの人に店の存在(や料理、場所など・・・)を知ってもらい、また興味を拡げ、深めてもらうことができる


しかし、誰に何を伝えたいのか、コンセプトが明確であることが前提であり、それを制作業者に伝え、制作業者もまたそれを消費者に伝えるための十分な技術・ノウハウを持っていることが重要となる。


よって、単に制作技術に優れているだけでなく、依頼主がホームページで伝えたいことを本当に理解し、それに沿った有意義な提案を出し、十分に制作物に反映してくれる業者を選定することが依頼主には求められる。
SEO GoogleやYahooでの検索結果に自分のサイトが上位表示されるように施すこと。


基本的なSEO対策はホームページ制作段階で実施しないと依頼主の手間が二度手間になる。外部リンクの質・量の向上は後からでも可能。
成果報酬制度を採用しているところが多い。ビッグワードだと10万円/日を超える場合もある。


レストラン系のキーワードならば、それほど高額にはならないものが多い。しかし、キーワードに"東京 フレンチ"を指定した場合に検索上位表示されることを目指すなら相応の予算が必要。
Webでレストランを見つける際、消費者はSEOよりも口コミの方を重視している。


しかし、それは店の名前が明確に意識されてからの話。店の名前すら知られていないような場合、その店の名前を知ってもらう上でSEOは有効であると考えられる。


地域+カテゴリー(ex."西麻布 ワインバー"など)で上位表示されるようにSEO対策することで、店の認知向上に繋がる。
検索連動型広告 GoogleやYahooでの検索時に自分のサイトへのリンクが広告枠内で表示されるようにすること。


GoogleならAdWords、Yahooならスポンサードサーチ。

「費用」は、「検索連動型広告のクリック数分の広告料金」と言い換えられ、以下の計算式で表わされます。
表示された広告がクリックされた時点で初めて課金されるということですので、以下のような計算式で表すことが出来ます。


= インプレッション数(回) × クリック率(%)× クリック単価(円)


= クリック数(回) × クリック単価(円)


※参考文献はこちら
「効果」は、「検索連動型広告によって発生したコンバージョン数分の利益」と言い換えられます。
コンバージョンによってどのような利益が上がるかは、何をコンバージョンとするかによって異なりますが、ここでは分かりやすく単価で表わせるものとして扱っています。

検索連動型広告の効果を求める式

= インプレッション数(回) × クリック率(%)× コンバージョン率(%)× コンバージョンによる利益(円)

= クリック数(回)× コンバージョン率(%)× コンバージョンによる利益(円)

※参考文献はこちら
アクセス解析/Web解析 ホームページに毎日、どの程度の人が見に来てくれているのか・・・ただ漠然とその数字を眺めていても何もわからない。


ホームページが持っている目的や期待効果に対してどの程度達成しているのかを計数チェックし、少しでも良くしたい、と考えているお店にとっては極めて重要なこと。


・目的や期待効果に対しての達成度を評価するための測定指標を正しく選ぶことが出来ているか


・訪問者に読んで欲しいページは訪問されているのか


・滞在時間は適切か


・店への興味をどのように拡げ、深められているか


など
●アクセス解析ツール
アクセス解析ツールは無料のものが多くあり、それで事足りると考えられる場合が多いが、使い方、読み方を十分に知る必要がある(最低でも本一冊くらいは)。


有料のアクセス解析ツールは機能が豊富な分、ソフトウェア自体が高額、また高いスキルも要求される。


●アクセス解析作業の実施
アクセス解析の作業そのものは、企業によってはアウトソーシングするケースも多い。予算の少ない個人経営飲食店では、無料ツールを採用し、自前で一定レベルのアクセス解析ノウハウを持つことが一番低予算で仕上げるコツ。
・自分の店のWebサイトが、その目的に対して期待通りに機能しているかどうかを類推・確認することができる。


・Webサイトや店舗経営の改善サイクルの起点として機能し得る。


ただし、アクセス解析結果から知り得た改善要素を実際に対策せずに放置するなら、解析自体無意味となる。


・また、顧客データや売上データと組み合わせて分析することで、実際に店に足を運んでくれたのか、またそのお客がどのように満足したのかを見込み客時点からトラッキングすることができる(どの時点でお客が店への興味を喪失したかを類推することもできる)。
ホームページのコンテンツ更新 ホームページは一度作って、後は放置しておけば良いというものではない。更新すべきコンテンツは最適なタイミングで更新し、更新した旨も告知をしなければ読んでもらえない。


例えば、飲食店の場合であれば、季節毎に更新されるメニューの内容や料理の写真も変更しなければならないし、テキストの文言もそれに合わせたものにする必要がある。


また、上記のアクセス解析の状況などを踏まえ、タイムリー、かつ継続的に改善していくことがホームページによる集客を成功に導く。


この作業が発生する場合は、単に新しいコンテンツを作成するだけでなく、それをサーバー上にアップロードする、という「サーバー管理業務」も発生する。
ホームページのコンテンツ更新に関わる料金徴収方法にもいくつかのパターンがある。


ホームページ作成業者がサーバーレンタル業者を兼ねている場合であれば、レンタル契約の中に「サーバー管理業務」+「ホームページのコンテンツ更新」が含まれる場合がある。





・店からの最新情報を見込み客に告知することができる(タイムリーであることが望ましい)。


・アクセス解析の結果などと踏まえ、コンセプトから外れていたり、集客に対して有効ではないテキスト・画像などをどんどん変更し、サイトを改善することができる。


・ホームページ上のデータが常に最新であることで、見込み客からの好感度が向上し、来店への強い動機付けとなる。
サーバー管理業務 ●障害検知と復旧
レンタルしているサーバーに何らかの障害が発生しても、そのサーバーの障害を検知~復旧はサーバーレンタル業者がサーバーレンタル費用の範囲内で賄ってくれる。


●バックアップ
サーバーレンタル時の契約タイプなどによってはレンタル業者側が定期的に実行してくれる。


●ファイル/ディレクトリ管理
ホームページのコンテンツは階層型に管理される場合がほとんどである。例えば、料理の写真を差し替える場合には、その写真データをサーバー上のどのディレクトリに保存するか、またどういう名前のファイル名として保存するか、などルールを作った上で管理しないと、トラブルが生じたときに復旧に手間がかかる。


●ディスク容量管理
サーバーレンタルの契約タイプによっては、使用できるディスク容量が比較的小さいため、画像データや動画などをふんだんに使ったホームページの場合、メールボックスとの兼ね合いでディスク容量不足になる場合がある。その場合、どのように空き容量を確保するか、日常的にファイルの管理を行い、ディスクの残容量を監視する必要がある。

左記参照。


レンタルサーバーの場合、ハードウェアやネットワーク系の障害などが生じた場合はサーバー業者がレンタル契約の範囲で対応してくれる。


しかし、画像データへのリンクが切れるなどの論理的な不整合はホームページのオーナーが自身で解消する必要がある。


また、ディスク容量不足の場合などにどのデータを削除して、新たに必要となった容量分を確保するか、などもホームページのオーナーの責任である。


これらの作業を自前でやれる力が無い場合は業者に任せることになる。費用は多くの場合、個別見積もり(数万円/月以上かかるものと思われる)。
集客などに対する直接的、表面的な効果は無いと言えるが、いざという時に、これらの管理を怠っていると解決・収束に大きな手間がかかる。


福島第一原発の事故のようなもので、最悪の事態を防ぐことに繋がるとも言える。

このまとめ方に異論をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんし、今更、新しい情報があるわけでもありません。

ですが、これからホームページの作成やリニューアルを考えている飲食店のオーナーの方にとっては多少なりともホームページを作るためにどれだけのことを考えなければならないのか、簡単に知ることが出来るのではないかと信じています。

いずれにしても、ここで最も重要なのは「店のコンセプト」の明確化と共有であると申し上げておきます。※なお、ホームページのリニューアルをご検討されている方には当方のホームページ診断サービスをお薦めいたします。