前回の続きです。
田中克幸氏(以下、田中K氏)の混植・混醸(ゲミシュターサッツ)をテーマとしたセミナーでは以下の12種をテイスティングしました(写真が暗くてスミマセン)。
1) Wieninger Rosengartl Alte Reben 2006
2) Senteurs des Vignes 2009 / Albert Mann
3) Chateau Simone 2008
4) COSTAFAMALFI per Eva 2009 / Tenuta San Francesco
5) Scheherazade 2005 / Schloss Sommerhausen
6) The Jewels of Kisvin 2010 / Team Kisvin & Chateau Sakaori
7) Jassarte 2006 / Guado al Melo
8) Chateauneuf du Pape 2007 / La Fagotiere
9) Chateauneuf du Pape La Crau 2007 / Domaine du Vieux Telegraphe
10) Vallee d'Aoste Torrette Superieur 2009 / Anselmet
11) Bramaterra 2003 / Anzivino
12) Costasera Amarone Classico 2007 / Masi
それぞれのワインについて的を得た手短なコメントを記載できる能力はございませんので、私的な要所だけで失礼します。
1) Wieninger Rosengartl Alte Reben 2006
ゲミシュターサッツを代表するワインの一つに、Wieninger(ヴィーニンガー)が挙げられます。日本ではヘレンベルガーホーフによって正規輸入されており、その中でも、Nußberg Alte Reben(ニュスベルグ・アルテ・レーベン)は多くのワインプロフェッショナルから絶賛される、Wieningerの日本におけるフラッグシップと言って良いでしょう。
このセミナーでは日本に輸入されていないRosengartl Alte Reben(ローゼンガルテル)を利くという大変貴重な体験をすることができました。
Wieninger Rosengartl Alte Reben |
この場では飲み比べることを目的としておらず、あくまでもゲミシュターサッツの代表的銘柄の1つとしてテイスティングしましたが、これがまぁ素晴らしい。
私はワインのテイスティング方法をきちんと習ったことがなく、我流以外の何物でもありませんが、これだけ大きな振幅の大きなウネリを誇りながら適度な角を定位置で維持し続けるバランス感覚は素人の私にも十分認識できるもので、確かに田中K氏がおっしゃるゲミシュターサッツの美点そのものと言えるでしょう(個人的にはNußberg Alte Rebenの方がより角張っているような印象です)。
田中K氏の解説によると、5つの品種から構成されており、Grüner Veltlinerが中心で、他はWißbrugunder、Neubruger、Traminer、Riesling。高貴品種のみから構成されているところに人為があるが、味わいは自然な統一感に貫かれている点が特徴だということです。
3) Chateau Simone (Blanc) 2008
Chateau Simone(シャトー・シモーヌ)というと、このクラシックなエチケットの影響(?)や、思ったよりも高価なこともあり、所謂ワイン愛好家の人からは(相対的に)縁遠い存在です。しかも、寂しいことに単なる南仏のワインという扱いでゲミシュターサッツで作られていて、しかも標高が高く寒暖差の大きな北向き斜面であり、しかも石灰質土壌である(=重くてベタついたワインを作るテロワールでは無い)ということはほとんど知られていません。
Chateau Simone (Blanc) 2008 |
6) The Jewels of Kisvin 2010 / Team Kisvin & Chateau Sakaori
田中K氏曰く、「このワインはネタ(笑)」とのことです。
何しろ、使われている品種は39品種(驚!)。全てヴィティス・ヴィニフェラ系の品種だそうです。
まぁ、今は国産ワインブームであることですし、興味のある人が一生懸命テイスティングすれば、美点が見つかる可能性が高くなるでしょう(笑)。個人的には掴みどころが無いような感覚がありました。よく言えば、良い悪いという単純な判断を許さぬワインとでも言いましょうか(笑)。
9) Chateauneuf du Pape La Crau (Blanc) 2007 / Domaine du Vieux Telegraphe
南仏、パプが好きな私としては、このヴュー・テレグラフを正しく理解できているかどうかは重要でした。Chateauneuf du Papeは混植・混醸で作っているところもあれば、単なるブレンドワインとして作っているところもあります。ヴュー・テレグラフはもちろん、混植・混醸です。8)のCdPがブレンドワインだったので、比較ができました。
所謂、シャトーヌフ・デュ・パプで許可されている栽培品種のほとんどをLa Crauという素晴らしい畑で栽培しています。白はクレーレット、グルナッシュ・ブラン、ブールブラン、ルーサンヌによって構成されており、全ての品種が完熟しており、ゆえにアルコール度数も高いのですが、美点はそこにあるのではなく、タンニンのこなれ具合やゆったりとした複雑さは、単なるブレンドワインではあり得ないまとまり感。それで居ながら、つぶつぶとしたミネラル感を持った粒子が口内の粘膜を刺激し、非常に長い余韻を作っていました。
個人的には、もう少しアルコール度数を抑えれば、もっと美しい白ワインとして楽しめるのではないかと思いました。
その他にも、12)のMasiのAmarone Classicoなどは混植・混醸の赤ワインの素晴らしい成功事例として挙げられるでしょうが、やはり田中K氏が言う通り、今のところは(?)混植・混醸は白ワインの方が適しているように思いました。
果たして、このセミナーで一番人気だったのはどのワインなのか、そして混植・混醸というカテゴリーのワインがこれからどのように認知されていくのか、非常に興味深いと思いながら会場を後にしました。