料理通信の2010年1月号のP.66~67に、ジャーナリストの寒河江千代さんが、ロクサヌ・ドビュッソンという女性のことを書いていました。
エクセプショネル - 彼女を表す人々の口から幾度この言葉を耳にしただろう。マダム・ロクサヌ・ドビュッソン。30年来、パリの最高級店での昼食を日課とし、そのテーブルには多くの才能あるガストロノミー界の若者たちが招待されてきた。グランシェフ、パティシエ、ソムリエ、支配人、料理評論家・・・・・・。
<中略>
午餐への招待のみならず、マダムの提唱と援助で、早朝の店を貸し切り、シェフ同士が順番に腕を振るう『シェフの朝の会』『パティシエのお茶会』『ソムリエの食事会』が、過去10数年にわたり、ひそかに催されていたという。「他者の才能を知って欲しかった。彼らは時に嫉妬深く(笑)、他店を訪れる時間もないの」。供される側のフランス料理の醍醐味を知ると知らぬでは、プロの裁量は自ずと変わる。卓越したプロこそ仕事の深さを理解し、賞賛を与え合えるはず。それはひとえに、彼らのさらなる飛躍を願うから。フランス料理を愛するが故の彼女の情熱は破格だ。真の顧客とは、単なる消費者ではない。パトロナージュ(後援、保護)の元に発展を遂げた古のフランス料理の歴史を、彼女によって私は今思い起こす。
現代の日本でも、このような美食家やパトロンの類の方々は居らっしゃるのかもしれませんが、私のような小市民には全く縁遠く、その存在を噂で聞くこともありませんが、彼女のレベルとなると極少数でしょうか。マダム・ロクサヌの場合も多少誇大化された可能性のある、伝説めいた部分はあるかもしれませんが、30年もこういったことを継続しているという点で、パリのガストロノミー界にとって特別な人物であり、世界的に見ても極めて特異なケースであることは間違いありません。
この記事で書かれているように、お客サイドからレストランスタッフのためにここまで手間とコストをかけて、積極的に成長への「気づき」を長期間に渡って支援しよう、あるいは、お店とお客が共に幸せな関係を構築・発展していこう、という取り組みはなかなかできることではありません。ガストロノミーとその文化を愛するが故だと思います。
しかし、そのようなお客ばかりになれば良いか、というとそうでも無い筈。全ての料理長がこれと同じようにアプローチをされても迷惑・面倒な場合の方が多いかもしれません。お店のスタッフやお客個人の性格やモチベーション、感情にも依存するのはもちろんのこと、店の業態や客層、売上構成、ビジネス規模によってお店とお客の理想的な関係は異なる筈です。
自分が考える理想的なお店とお客との距離感・関係と現状とのギャップを分析し、どのような方法で関係を構築していくか、またその際、ITやWebをどのように活用すべきかを本気で考えるべきではないでしょうか。
お悩みの方はご連絡ください。
jordan21th アットマーク hotmail.com
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