2010年8月29日日曜日

雑誌に掲載される意味・目的をクリアにする

本・雑誌の発行部数はもうずーっと右肩下がり。
そして、書籍の返本制度が一般的に認知されるようになり、その返本率が約40%という現状を知ると、クオリティ・レストランの関係者にとっても本・雑誌に掲載されることの意味を再考する必要があるはずです。


幻冬舎の2010年3月期決算説明会資料より

【発行部数/実売部数】
日本雑誌協会のサイトをご覧になったことがある方もいらっしゃると思います。このサイトに掲載されている、レストランねたを扱いそうな雑誌の発行部数を抜粋してみました。

雑誌名 出版社名 発行部数 実質発売部数
KANSAI1週間 発行:サンケイリビング新聞社 講談社 96,540 57,924
関西ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 118,160 70,896
東海ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 83,320 49,992
TOKYO1週間 講談社 86,696 52,018
東京ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 91,434 54,860
ぴあ(首都圏版/関西版/中部版) ぴあ 135,876 81,526
福岡ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 84,750 50,850
北海道ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 46,056 27,634
横浜ウォーカー 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 88,810 53,286
散歩の達人 交通新聞社 80,000 48,000
湘南スタイルmagazine 枻出版社 150,000 90,000
Meets Regionalミーツ・リージョナル 京阪神エルマガジン社 150,000 90,000
dancyu プレジデント社 126,109 75,665
「旬」がまるごと ポプラ社 50,000 30,000
食楽 徳間書店 100,000 60,000
ar 主婦と生活社 124,142 74,485
with 講談社 470,000 282,000
MORE 集英社 484,167 290,500
25ans アシェット婦人画報社 70,667 42,400
GINZA マガジンハウス 71,859 43,115
SPUR 集英社 115,834 69,500
ELLE JAPON アシェット婦人画報社 88,200 52,920
フィガロジャポン(madame FIGARO japon) 阪急コミュニケーションズ 70,548 42,329
Numéro TOKYO 扶桑社 60,000 36,000
AneCan 小学館 260,000 156,000
Oggi 小学館 219,250 131,550
CLASSY. 光文社 181,750 109,050
GISELe(ジゼル) 主婦の友社 103,450 62,070
Domani 小学館 125,750 75,450
BAILA 集英社 150,834 90,500
MISS 世界文化社 84,534 50,720
GLAMOROUS 講談社 119,250 71,550
オズプラス スターツ出版 106,084 63,650
CREA 文藝春秋 83,709 50,225
FRaU 講談社 82,750 49,650
amarena 扶桑社 80,000 48,000
VERY 光文社 243,075 145,845
Grazia 講談社 68,792 41,275
Como(コモ) 主婦の友社 94,392 56,635
saita(咲いた) セブン&アイ出版 180,050 108,030
LEE 集英社 311,667 187,000
STORY 光文社 245,634 147,380
Precious 小学館 102,417 61,450
marisol 集英社 60,000 36,000
レディブティック ブティック社 85,000 51,000
家庭画報 世界文化社 157,080 94,248
クロワッサン マガジンハウス 282,646 169,588
pumpkin 潮出版社 187,292 112,375
婦人画報 アシェット婦人画報社 96,792 58,075
ミセス 文化出版局 98,417 59,050
ViVi 講談社 432,500 259,500
CanCam 小学館 400,000 240,000
JJ 光文社 198,767 119,260
Ray(レイ) 主婦の友社 199,134 119,480
オズマガジン スターツ出版 87,113 52,268
Hanako マガジンハウス 95,667 57,400
SAVVYサヴィ 京阪神エルマガジン社 170,000 102,000
Richer(リシェ) 京阪神エルマガジン社 100,000 60,000
Mercedes magazine 世界文化社 163,000 97,800
Gainer 光文社 105,659 63,395
MEN'S CLUB アシェット婦人画報社 61,384 36,830
Casa BRUTUS マガジンハウス 75,917 45,550
Safari 日之出出版 74,909 44,945
BRUTUS マガジンハウス 104,114 62,468
Pen(ペン) 阪急コミュニケーションズ 72,253 43,352
UOMO 集英社 36,667 22,000
ENGINE 新潮社 36,509 21,905
おとなの週末 講談社 135,667 81,400
めしとも 角川グループパブリッシング(角川マーケティング) 55,600 33,360
MEN’S EX 世界文化社 54,703 32,822
LEON 主婦と生活社 72,942 43,765
一個人 ベストセラーズ 200,000 120,000
サライ 小学館 187,500 112,500

  • 「*」は印刷証明付部数
  • 表の4列目:[実質発売部数] = [発行部数] - [発行部数]×0.4
また、大日広告社のHPに掲載されている、上記以外の料理・レストラン関連雑誌の発行部数(抜粋)はこちらです。

雑誌名 出版社名 発行部数 実質発売部数
専門料理 柴田書店 91,000 54,600
月刊食堂 柴田書店 82,000 49,200
近代食堂 旭屋出版 95,000 57,000
日経レストラン 日経BP 19,137 11,482
グルメジャーナル 飛鳥出版 105,000 63,000
料理通信 料理通信社 50,000 30,000
料理王国 料理王国社 100,000 60,000


さらに、首都圏の新規開店レストラン情報を積極的に掲載している東京カレンダーのHPの情報を転記します。

雑誌名 出版社名 平均発行部数 実質発売部数
東京カレンダー 株式会社ACCESS 85,000 51,000


こうして見ると、実売で6ケタ売れている雑誌って本当に少ないものですね。JJなんて今から25~6年前は凄く売れていたように思うのですが、私の思い違いだったのでしょうか・・・。


雑誌の場合、店頭での立ち読みで済ませてしまう(賢い?)消費者も多いため、実際に購入した人以上の人が掲載された情報を入手した、と考えるべきでしょうが、思った以上に売れていないですね。


なお、大日広告社のHPには各誌の媒体特性が記述されていますが、統一された特性情報ではない点には注意が必要です。ここでは料理王国の地域別読者シェアが出ていたので、転記しました。


これを見ると、料理王国の読者の63%が関東と関西に集中しており、実売6万部のうち37,800部が関東・関西の大都市圏で売れている、ということがわかります。


【コンバージョン率は?】
コンバージョンとは見込み客の成約率のことです。雑誌に掲載されたことがきっかけとなってお客がお店を訪問してくれる確率はどの程度なのでしょうか? WebのECサイトの場合、平均1~5%といったデータがあります。これを前提に雑誌を考えてみましょう。


飲食関連の雑誌とそれ以外の雑誌(例えばファッション誌)とでは、そもそも主旨が全く違います、それを読む人のモチベーションも全く異なるでしょう。仮に、掲載された飲食店のコンバージョン率を以下のように仮定すると、

雑誌名 出版社名 平均発行部数 実質発売部数 平均コンバージョン率(仮定) 期待客数
東京カレンダー 株式会社ACCESS 85,000 51,000 3% 1,530
料理通信 料理通信社 50,000 30,000 5% 1,500
Meets Regional 京阪神エルマガジン社 150,000 90,000 2% 1,800
STORY 光文社 245,634 147,380 1% 1,474

こんな感じになります(あくまでも、仮定の話です)。
料理通信とSTORYでは実売部数に結構な違いがあっても、コンバージョン率が違うとそれほど大きな違いにはならないということがわかります。また、この表の例ではMeets Regionalが最も多くの来店数を期待できることになります。よって、お店サイドから考えれば、Meets Regionalに掲載してもらえればメリットになりますし、広告を出すならMeets Regionalにお願いしよう、ということになります。


例えば、東京カレンダーなどは新規にオープンしたお店を中心に非常に多くのお店が掲載されます。掲載されたお店が50件あって、平均コンバージョン率が3%としても、実際は相当なバラツキがあると仮説を立てることもできます。上記の表の例で言えば、仮に最低コンバージョン率が0.2%だとすれば、期待客数は102にまで落ちてしまいます(有料広告掲載の場合はこういったことをもっとシビアに考える方が良いでしょうね)。


逆にSTORYのような雑誌ではレストラン紹介はNews記事か飲食に関する特集の場合になります。News記事の場合、同業他店が紹介される可能性は低いですから、飲食店としての注目度は高くなります。


よって、短期での集客を目的に掲載してもらうのか、中長期的な効果を狙うのか、など掲載してもらう目的・意味をある程度絞っておかないと、思った以上に効果が無いという否定的な印象や誤った判断をする場合も生じてしまいます。これは雑誌に限らず、TV取材やホームページ、ブログ、Twitterなども然り。それぞれのメディアの特性を理解すること、自店が欲する効果が期待できそうにないなら手間やコストとのバランス次第では断る勇気も必要。期待する効果が短期的な集客なのであれば、それに近づくことができるメディアや露出法を選択しないといけません。









それに、集客以外にも色んな価値もあるはず。その価値・目的を曖昧にして安易に手間と情報を垂れ流しにするのはお勧めいたしません。

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