2010年10月30日土曜日

データを読む/魚群は動いている

昨日、日テレのニュースで女性の36%が外食回数を減らしているというトピックがありました。
ウチご飯やお弁当などのキーワードが飛び交っている様から見ると、確かに減っているだろうなぁという気がします。ただし、36%という数字は私の感覚には馴染みが悪く思えます。

一方でぐるなびがぐるなび総研という会社でリサーチビジネスをやっています。
こちらの「外食費(夏)」というレポートを読むと、「この夏(78月)の外食費は「増える」が「減る」を上回り、増加傾向」という論調。また「景況感」というレポートには景気は回復傾向だが、厳しい業績続く」というサマリーが。

  • 外食産業の現状をどの言葉が正しく言い表しているのでしょうか?
  • 特にクオリティ・レストランの市況はどうなのでしょう?

まず、これらの統計データ、調査データ自体の信ぴょう性は疑ってみても良いのではないでしょうか。

最初の36%減の話は東京ガスの調査データであるという事実に目を向けなければなりません。

昼食を外で食べる回数が1回減っても、10回減っても「外食回数が減った」という一言でまとめることもできます。でも、外食産業に与える影響が1回減と10回減のどちらが大きいかは明らか。つまるところ、必ずしも女性による外食産業の総利用量が36%縮小したわけではないということです。

東京ガスの場合、ガスをたくさん使ってもらいたい、あるいは使用量が増えているということを何らかの形でアピールしたい筈で、女性の外食が減っている⇒家庭でのガスの使用量が増えている⇒「安価な熱源の都市ガスはこんな時代に最適ですよ!」と暗に言いたいだけ(要は恣意的なデータである)と言うと斜視し過ぎでしょうか(?)。

一方で、ぐるなび総研のレポート。
まず、「外食費(夏)」という調査データはあくまでも201071620日に採取したデータである(予想データである)ということです。「外食産業を盛り上げよう」、「誰もが苦しむ夏もお客は外食をする気があるのだから頑張ろう」という意図の元、公開されたデータなのでしょう。要は「飲食店さん、ぐるなびのサービスを利用してください」という意図が汲み取ることが出来ます。

もう一つのレポート「景況感」については、あくまでもぐるなび加盟店を対象にした調査です。その中で
  • 売上:増加の傾向22%(昨年8月比+5%)
  • 利益:増加の傾向19%(昨年8月比+6%)
  • より良質なメニュー:好調店33%(不調店22%)
  • 料理の値下げ:不調店26%(好調店7%)

と言っているだけに過ぎないわけです。このデータも「ぐるなびを利用している飲食店さんはこんなに調子良いですよ、皆さん、利用しませんか?」というメッセージなのではないでしょうか。

元々、TVに出た36%という数字の大きさに反応して調べ始めたわけですが、さて、この3つのレポートを総合すると要は「外食産業は依然として厳しい状況下にある」ということが言えますが、女性云々という部分を明らかにするにはもうちょっとデータが欲しいですよね。そこで探したところ、やはりぐるなびのレポートでありました。2008 - 2009年のデータですが「第2回レポート「属性別分析」」が。

これを見ると・・・
  • 女性の昼食での外食機会も減り、多くの世代で支払額も減少している。

  • 女性の「ゆっくりの夕食」の頻度も減り、多くの世代で支払額も減少している。


  • 女性はプライベートの外食機会を大切にする
  • 高所得層は外食の機会を多く持つ(以前と比べて減っているかどうかは不明)。


ということが読み取れます。

このように見てくると、ここ1年くらい流行っている「女子会」もかなり絞られた機会であることが判りますね。飲食店は以前よりも小さくなったパイを取り合っているということです。

とすると、自分のお店がターゲットにするべき客はこのままで良いのか再考する必要があるかもしれませんね。例えば、以下のデータを見ると、自分で料理をする機会の少ない20代男性の独り客はお酒の消費量は少ないもののひとりでのふだんの外食を大事なものと考えているようですから、地域性やお店のスタッフとの世代差などを考慮して、そういうニーズを満たす施策を実行するのも良いかもしれません。

要は「魚群(ターゲット=お客)は動いている(はず)」ということ、そして「動いているのは位置・規模共に」ということですね。自分が持っている釣り道具(=施策)や漁場を変えないと狙った獲物を釣ることはできませんし、獲物自体も変える方が良い場合もあります。内部にあるデータ、上記のような外部データをうまく読み取っていく必要があるわけです。

2010年10月28日木曜日

居酒屋って凄い

酒の消費量が減っていると言われ始めて結構、時間が経っています。

最近では、サントリーがハイボールに活路を見い出す一方でキリンがビール販売の不振により栃木工場を閉鎖するなど、日常を彩るお酒の種類が確実に変わっているとも感じます。

こういった流れと(良くも悪くも)あまり関係が無いのが、「●●料理店」でしょう。
●●には日本、フランス、イタリアなどが入ります。

日本料理店ではワインを常備するお店も増えましたが、やはり日本酒、焼酎、ビールが中心でしょうし、フランス料理ではワインが圧倒的(たまに日本酒を置いているお店がありますね)。

中華料理は比較的ベバレッジに対して柔軟のような気がします。紹興酒という地元のお酒があるにも拘わらずこのようになっている理由は様々考えられますが、やはり、日本人が紹興酒に対してまだ馴染みが薄いことが原因ではないでしょうか。


- 居酒屋の可能性 -

料理を中心に考えるとベバレッジを縛ってしまう場合が多い一方で、居酒屋という業態はどんな酒を置いてもその場に対する馴染みが良く、またどんな料理を作っても違和感がありません。居酒屋という業態はお酒×料理の組み合わせの自由度が非常に高いのです。前菜からメインまでの流れも、途中でのオーダー追加も、料理毎にお酒を変えるのもお客の気分次第で出来てしまうわけです。

これって、居酒屋だから当り前なのですけれど、改めて考えると凄い業態だな、と思いませんか?

例えば、鮎の塩焼きに対しては、日本酒を合わせても良いですし、川魚の風味やカルシウムに拮抗する白ワインを合わせても良いでしょうし、生牡蠣と白ワインの組み合わせに疑問を持っている人に対しても様々な提案が可能です(それこそ、自由という観点ではハイボールとの組み合わせにチャレンジしてみても良いかもしれません)。

料理人に腕と柔軟性があれば、居酒屋の厨房にあると思われる炭床を使って、肉を焼いても良いですし、本質がブレなければ色々な創作料理を作ることができ、さらに、それらの料理にサービス担当が幅広い選択肢から合うベバレッジを選ぶ技量があれば、これはかなりの可能性を持っているのではないでしょうか。

実際、そういう力を持った居酒屋は確実に増えています。


※どちらの写真も単なるイメージです
カジュアルでありながら、しっかりと仕事された料理とベバレッジという武器は今の外食不況においても十分な威力を持っている筈。●●料理店の既存客がそちらへ流れるという可能性も十分にあると思っています。

居酒屋も、そうでないお店も頑張れ~。

2010年10月26日火曜日

海外レストランのWebサイト事例

以前、あるお店のWebサイトを作ったときに感じたことですが、Webサイト作りって、オーダーメイドでスーツを作るのに似ています。

スーツ作りにおいてはフィッティングが最も重要ですが、このフィッティングと全身のラインの美しさを共存させるのはなかなか至難の業です。本人の体型やフィット感を重視し過ぎると、全体のラインが損なわれる場合があるし、またその逆もあるわけです。

全体のバランスを最終的にどう整えるかはプロのテーラーに任せることになりますが、そこに至るまでの細々とした要件(例えば、ウエストのシェイプの位置、袖の長さ、ラベルの形など)はお客がはっきり示す必要があります。

Webサイト作りも同様だと思いませんか。
技術的なところはさておき、まずは、Webサイトで訴えるべきこと、訴えたいことをきちんと制作業者に伝えることが良いWebサイト構築への最初で最大の課題と言えます。

一方、正直なところ、今の日本の飲食店のWebサイトやブログはどこも似たりよったりのような気がします。これは日本国内の同業他社のWebサイトまでは参考にするけれど、イメージ止まりの場合がほとんどで、さらに具体的な要件に落とし込んだり、もっと他の事例を探してみる、などの努力が足りなかった結果ではないか、と感じています。

そこで少し、海外レストランのWebサイト中で、これは日本でもやってみれば良いのにな~といった感じを持ったWebサイト事例を少しリストアップしてみます。

日本のサイトでは見られないような独自のアイデア、工夫がそこかしこに見られるので、リニューアルや新たな立ち上げを考えているお店の参考になれば幸いです。
  • NOMA
    • 2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.1レストラン
    • 北欧のレストランらしく柔らかなトーンに絞り込んだ色調とミニマルでコンパクトながらわかり易い画面とページの構成(まるでインテリアショップのWebサイトのような写真)
    • 英語とデンマーク語に対応
    • 予約フォームは無し(電話とeメールでの受付)
  • Mugaritz
    • モダン・スパニッシュを牽引するクリエイティヴさと実質感を両立する店(2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.5レストラン)
    • 飲食店サイトをFull-Flashで作る場合の好事例。店への興味、訪問への欲求を確実に高めるクオリティの高さ
    • 機能を犠牲にしない全体のデザイン。ただし、少し表示に時間がかかり過ぎる場合があるような・・・
    • 予約用のフォームはあるがSSL非対応(残念)
  • Martin Berasategui
    • エル・ブリやムガリッツ同様、スパニッシュ・レストランの最高峰の1つ
    • やはりFull-Flashで作っているが、Flashの欠点・不利を補って余りある仕上がり
      • スタッフの仕事ぶりを伝える動画の出来も素晴らしく、その場に居るようなライブ感があり、訪問意欲を掻き立てる。写真の出来も秀逸
      • トップ画面のナビゲーション・メニューが最初は非表示になっており、ユーザーインターフェースにおいてはMugaritzが勝るように思う
    • 予約専用フォームは無いがコンタクトフォームがある(SSL非対応)。
  • Charlie Trotter's Chicago
    • 米国のスターシェフのフレンチレストラン(ワインの品揃えが素晴らしい)
    • Webサイト自体は上記の3つと比べれば前時代的と言わざるを得ない
      • 自身の強みを最大限表現するまでには至っておらず、サイトの更新頻度も落ちている模様・・・(寂しい)
    • ナビゲーション/UIが悪い
      • 地図データの掲載も無い・・・
  • Wine and Chocolate Bar AYZA
    • ニューヨークの小洒落たワイン&チョコレートバー
    • アメリカのこのレベルの店らしく、facebookやtwitter、flickrなどをプロモーションに活用しており、facebookのファンになると初回訪問時にグラスワインを1杯サービス
    • トップページにテキストで表現可能な店の特徴を全て掲載することで、SEOとLPOに対応
    • バーチャル・ツアーは秀逸。店内が360度見回せる。正に仮想体験。
    • OpenTableを採用しており、空席管理、SSL対応ともに完備
※ちなみにFat DuckのHPもクリエイティブで面白いです。

ついでに・・・というと失礼ですが、日本を代表する京都の三ツ星店も三つほど事例として挙げましょう(菊の井は良いお店だと思いますが、Webサイトはあまり特徴が無く、ありきたりだったので割愛しました)。
  • 瓢亭
    • 京都・南禅寺に400年前から続いている料亭
    • フラッシュサイトであるが、小さなスクリーン・サイズへの対応に縛られた?
      • よく言えば日本らしいミニマリズムを感じ、悪く言えば、情報を伝えるメディアでありながら隠された部分が相当多そうな気配を感じる
      • 如何に日本らしい紫がかった(?)藍で埋めようとも空白が目立つ・・・
    • ミシュラン三ツ星でありながら、英語対応がなされていない
      • 同じ京都の三ツ星である嵐山吉兆との考え方の違いが表れているようで面白い
  • 嵐山吉兆
    • 湯木貞一が昭和23年に開店して以降、多くの名料理人を輩出した料亭
    • 海外客を意識してか、英文が併記されている点が日本の飲食店サイトとしては秀逸
    • 何度見ても、ランディングページのフラッシュとBGMが五月蠅く感じられ、店の雰囲気と合わない。海外客はこれを「Cool!」と思うのだろうか?
    • ランディングページから次の階層に移る際、ワンクッションあるのがもどかしい
  • 板前割烹 千花 ⇒ まさか千花がHP作っているとは知りませんでした(汗)
    • 2011年度、ミシュラン関西で三ツ星を取得。60年続く京風割烹の老舗
    • フラッシュはランディングページにのみ使用。日本語と英語に対応しているが、ランディングページのmetaデータは英語対応しておらず、英語でのSEO対策は頭に無い模様。
    • 必要最低限の情報提供に留めている点は瓢亭に似ているが、画像が少なく興味を膨らませる要素が少ない
    • 単なるミスだとは思うが、日本語ページと英語ページとで料理の値段が違う・・・Webサイトに掲載する情報の質に対する拘りが少ないことを感じさせます(もし、日本人と外国人で値段を意図的に変えているのであれば、それはそれで・・・ですが)
    • 予約については、「電話で&日本語で」と明記しており、それはそれで良しでしょう
こうして改めて見てみると、店の前を通りがからずとも、目にする機会があるWebサイトは外装以上の拘りが必要なもので、予算の許す範囲でお店の魅力を最大限に引き出したものであるべきだという気がしませんか?

クオリティレストランの運営に携わるビジネスマンとしての位置付けは極めて重要ですし、このブログではそちらの重要性をアピールしてきましたが、それもお店やオーナー、スタッフの技量や拘りが十分に発揮できることを前提としてのもの。

長く続けていれば、良い状態の時もそうでない時もあるはずですが、それでも、クリエイターとしての美意識や「自分はこうなんだ、これで行くんだ」という自信もしくは確信を感じたいと思うのは私だけでは無い筈です。

安易に妥協せず、自店のホームページには自分の拘り以上のものを詰め込む気持ちでWeb制作業者と真剣に向き合って欲しいと思います。

    2010年10月20日水曜日

    【ワインねた】ラングドック、頑張れ!

    一時、低~中価格帯ワインの雄としてもてはやされたラングドックのワインですが、最近ではショップからのメルマガに掲載されるケースがすっかり減ったように思います。

    個人的には色々と思い入れがあるエリアなので、少しでも話題にしたいと思い、本エントリーで取り上げてみます。



    ペルピニャン周辺はルーション地区

    上記地図で色の付いているところがラングドックです。

    ラングドックは比較的新しいアペラシオンだと認識されがちですが、新しいなんてものではありません。2007年にACラングドックが設立され、それまで別地域であったルーションを包含するようになったばかりだし、グランクリュやグランヴァンといった規定が作られることが決定したばかりの、今、正に様々なことが活発に動いている、最注目エリアと言えなくもないのです。

    美術出版社のワイナート 44号のタイアップ記事「ラングドックの可能性を信じて」には、ラングドックの持つ課題がコンパクトに述べられています。ここに書かれていることをまとめると

    1. グランジュ・ド・ペールのようなクオリティ・リーダーは居ても所詮はVDPであり、ラングドックという産地の代表では無く、一定のイメージの共有がなされていない
    2. エリアが広域であり、土壌特性が多岐に渡る
    3. INAOがシラーの使用を強制しており、本来、適地ではない場所にまでブレンドを義務付けられている
    の3つに集約されるでしょう。これら3つは互いに密接に関与しながら浮き上がった要因であり、さらに細分化する必要は無いと考えます。逆に大きくまとめるならば、AOCという考え方はその地域の特徴と品質を規定するものであり、これらが定まっていなかったために生まれた課題と言えると思います(しかし、歴史的・民族的な背景やら何やらでまとめるのは難しかったのでしょうね)。

    加えるなら、日本の昨今の自然派ブームと潮流が異なる点も不利に働いているでしょう。ビオディナミなどの栽培法に因らず、ナチュラルに抽出されたワインが好まれている現在、これまでは濃さに軸足を置いた品種・ワインが中心になっていたラングドックは辛い立ち位置です。

    また、偉大なワインは確かにクオリティ・リーダーそのものですが、特殊な例であるということです。
    例えば、ジェフリー・デイヴィスが流通させたシャトー・ド・ラ・ネグリーとその関連のワインなどはパーカーも非常に高く評価しましたが、日本では一時期20,000円近い値段にまで上がってしまい、余程酔狂な人しか飲むに至りませんでした。ゴビィのムンタダも然り、です(いずれも美味しいのですけれど)。

    ラングドック全体の製品ポートフォリオを考えると、その価値をCPの良いワインを大量供給できる点に集約し過ぎるのはどうかとは思います。しかし、それぞれのテロワールを十分に反映する品種と醸造技術を採用して作られたヴォリューム・ゾーンのワインが正しくプロモーションされることが日本でのラングドック再認識に繋がるような気がします。

    Pic Saint Loupの山

    ※古木のカリニャン、Pic Saint Loupのシラーには活路ありと見ていますが、さて・・・?

    2010年10月12日火曜日

    今の消費者が求めるものを見つけるために

    バブルの盛り、西武百貨店向けに糸井重里氏作が「欲しいものが欲しいわ」というのCMコピーを書きました。

    残業手当が満額支払われ給与も賞与も、個々人の成果以上(?)に稼いでいたであろうバブル時期、欲望に任せてモノを買っても何か満たされていない消費者の様を鋭くえぐった名コピーと言われます。

    考えてみれば、高度成長期以降、日本は常に過渡期と言われていたような気がします。
    その時々で捉えられ方・取り上げられ方は多少異なっても、この二十数年、いつも満たされていないが故に常に自分にとって新しい何かを探し続けているのではないでしょうか。

    それは「より安くて良いもの」であったり、「精神的な満足を満たす何か」であったりという具合で。不況下においても、それに対する小規模な反作用・・・いわゆる節約疲れも必ず起こってきたような気もします。

    例えば1995年に端を発したワインブームなどは?
    4月には1ドル79.75円という史上最高値を付け、景気としてはどん底を味わっていました。ところが、田崎真也氏が世界最優秀ソムリエの称号を得た途端に、業界からの仕掛けに市場は見事に呼応しました(最大の功労者はBRUTUSでしょうか?)。

    バブル時に最盛期を極めたファッション関連に興味を持っていた人が「モノを買う」という単純な行動に満足しなくなった結果・・・
    • ワインを買って⇒飲む(ファッションがワインに変わっただけ)⇒一緒に飲んで、周囲の人と楽しさを共有する(体験型エンターティメント)ツールとして
    • 「飲食」という日常の行動を深掘りする機会として(従来に無かった日常の変化)
    • 外食 = バブル時代に磨きあげたファッションセンスをご披露するハレの場としてレストランでワインを飲む(ファッションと飲食、そしてコミュニケーションによる楽しみ)
    など、外食を中心とした総合的&体験型のエンターティメントへのシフトするきっかけの1つだったような気もします。

    しかしながら、今のクオリティ・レストラン業界/ワイン業界の低迷ぶりを見ると、そうなった主たる要因は外部に存在するとしても、消費者からの反作用が起きていないですし、実際のところ業界側(メディア含めて)からは特に何も仕掛けていないということではないかと思います。

    嗜好性やトレンド性向の強いビジネスでは、先ずニーズありきというよりは市場への提案が直接のきっかけになる場合があります。ファッションビジネスにおいてはパリコレなどファッションショーやブローシャーを作って、個々のブランドからの提案、業界としての提案がはっきりと業界内だけでなく市場に示されます。しかし、クオリティ・レストランの世界ではそういった動きがほとんど見られません。

    ワイン業界では、先日開催されたDive to Wineや今度11月に開催されるFestivinなど、インポーター~飲食店~消費者が一気通貫でコミュニケーションし、ニーズやシーズを共有する機会が設けられるようになってきました。これらのイベントはうまく継続すれば「欲しいものが見つかる」力になる可能性を持っていると思います(そのために、うまく機能するようにPDCAサイクルを徹底できると良いのですが)。

    最初から期待値が明確で選択眼が確立した成熟した消費者は以前に比べれば明らかに増えており、そういう客にはニーズを満たしてあげることが優先されるでしょうが、それだけでは市場は活性化しません。潜在的なニーズを発見したり、新たな気づきを提供するためのシーズによる提案・働きかけが適宜行われることが望ましいと思っています。

    2010年10月9日土曜日

    反省します! ~ このブログについて

    自分が思っているよりは多くの方に読んでいただいているようで、リピート読者の方もそうでない方もありがとうございます。

    とはいえ、ほとんどコメント欄に直接コメントしていただくこともありませんし、読まれている方がどういう感想を持っているのか、直接知る方法がありませんでした。あまりコメントが付かないところを見ると・・・読むのが面倒くさい記事になっているか、もしくは興味からズレているか・・・理由は色々想定できるにせよ、どうダメなのか直接話を聞く機会があれば、と思っておりましたところ・・・

    先日、そして今日、お会いした方から「解り難い!」と一刀両断されました(笑)。

    理由は、テクニカルターム(専門用語)の説明を省略するために他サイトへのリンクに振り過ぎている点・・・これは3人の方からご指摘いただきました。

    伝えたいことを伝える力が無いというのはコンサルとしては相当にヤバイ状況なんではないかと思っておりますので、これからはもう少し・・・


    • 平易な言いまわし
    • 専門用語は極力使わない~使う場合はちゃんと説明する
    • 1つのエントリーを長くし過ぎないように
    してみます。
    努力目標ですが、とにかく同じ土俵で改善の話をしたい、という、ただそれだけの思いです。
    何か気に入らない言いまわしとかありましたら、どしどしご指摘くださいませ。

    よろしくお願いいたします。

    2010年10月5日火曜日

    【小ネタ】Web戦略うんぬんの前に

    このブログのタイトルは「クオリティ・レストランのWeb戦略を考えるブログ」となっていますが、ほとんどのエントリーは「それ以前」の話になっています。

    Web戦略うんぬんの前に
    • Webに掲載する店のコンセプトに従ってWebをデザインし、オペレーションする、とは言うが、そのコンセプトはスタッフ間で確立・共有できているのか? まずはそれが基本ではないか?
    • 従来の業務への生産性を向上しないとWeb戦略を実行する時間の余裕も生まれない
    といった、根本的で中長期的な改善に対する気づきを促すことと、そういう考え方こそがWeb活用の基礎であることを伝えたいと思い、そういう流れになっていました。

    Web戦略という言葉には新しい何かのような雰囲気がありますが、基本的な考え方は他のビジネス戦略、マーケティングと共通です。本質は変わりません。料理やサービスにおいて、せっかく卓越した職人技が備わっていたとしてもそれがマネタイズされなければ、職人としての満足も、社会的な意義も薄い状態で終わってしまいます。

    もっとも、現時点では「Web戦略」という大仰な言い方自体が飲食店、特に個人経営のクオリティ・レストランには馴染みにくいものであることは間違いないので、集客という視点においては、集客を促すための情報発信をするメディアの1つとしてWebは「アリ」だ、という視点で考えてもらった方が良いと思います。


    今更ながらですが、ちょっと記しておきたいと思いました。

    2010年10月1日金曜日

    今あるデータを活かしましょう

    このお店でも毎月、売上目標を設定されていると思います。

    売上目標の数値がどの程度、意欲的な数値であるかにも依りますが、毎月、売上目標をクリアしているお店があるとすれば、それは素晴らしいことですよね。そういう店であれば、特に販売データや顧客データの細かな分析をしなくても、それほど大きな問題は無い・・・というのは間違いです。


    調子が良くないお店であれば、状況を何とか改善するための切り口を探るために。好調なお店でも、その好調の原因を把握し好調を持続させ、中長期的な目標の達成のためには、常に経営状況を示すデータに対する感度を高めておく必要があります。


    よく言われることですが、日々の売上データや仕入のデータを、ただ漠然と見ていても、原因や次の一手が見えてくるわけではありません。その経営指標の性質や優先順位によって、どのような見方をするべきなのかが変わります。もちろん、好調なお店とそうでないお店とでは、重視すべき経営指標も異なります。


    対前年同月比で色々な数字が出されますよね。売上、利益率、客単価など。
    これらだけを診ても、「去年より景気悪いから・・・」とか「8月は猛暑日が多かったし、海外旅行者が過去最高だったらしいし」などの現象や原因をただ受容するだけで終わってしまいます。さらなる不景気の長期化も予想されていますが、そのまま流されてしまっても「仕方が無い」という言葉で済ませたくないですよね。まずは今、持っているデータを診る視点(軸)を変えたり、周囲にあるデータと突き合わせたりして課題やその解決策が見えてくるかを確認し、データが不足していると判断できるなら、追加収集してみてはどうでしょうか。これらのデータを最大限分析・活用することで、既存資産を活かしつつ費用対効果の高い集客・販促を実行する手だてが少しずつ見えてくるはずです。


    何か例を・・・ということで、以下のような基礎データを持つ、ビストロがあると仮定します。

    席数 20
    平均客席稼働率 78.0%
    平均客単価 ¥8,000
    月平均営業日数 25


    このデータからどんな気づきが得られるでしょうか?


    稼働率78%という数字の良し悪しを判断することもできません(= どこに課題があるのかもわからない)し、客席稼働率をどうすれば上げられるか、あるいは客単価をどうすれば上げられるかといった課題解決の動機付けになるような情報にはなりません(本来は平均原価率や損益分岐点がいくらなのかくらいは最低限はっきりするべきかと・・・)。


    このデータにもう少し情報を追加して、以下では客単価における課題発見というストーリーをシミュレーションしてみます。
    2つの売上構成のパターン(パターンAとB)があると仮定します。
    客単価範囲
    (円)
    パターンA
    (人)
    パターンB
    (人)
    2001~4000 38 63
    4001~6000 68 102
    6001~8000 113 84
    8001~10000 72 40
    10001~12000 53 23
    12001~14000 29 12
    14001~16000 11 29
    16001~18000 6 37
    来客数/月 390 390
    客単価 ¥8,000.0 ¥8,000.0


    どちらのパターンも客単価は8,000円ちょうど、来客数/月も同じ390人です。このデータをグラフ化してみます。
    どうでしょう、表形式で見るよりも随分と視覚化されて色々な気づきや課題が見えてきませんか?


    パターンAはこの店の中心顧客が客単価6,001~8,000円付近に分布するのに対し、パターンBは4,001~6,000円付近と16,001~18,000円付近の2つのピークに分布しています。これは平均単価だけを求めているだけでは決して気づくことが出来ないものだということがわかります。


    パターンAの場合、10,000円以上の高額消費をしてくれるお客が少ないようなので、6,001~8,000円遣ってくれる中心客にグラスワインをさらに提案したり、チーズやデザート、食後酒を薦める案や料理とワインのマリアージュ・セットなども考えられるかもしれません。


    パターンBの場合は、ちょっと高額なボトルワインを頼んでくれるお客が居そうです。ワインの格に合わせた中~上食材を使ったメニューの提供や、従来、低価格のボトルワインを注文していたお客がもう少しだけ手を伸ばし易いように、中価格ワインのラインナップを見直すのも良いかもしれません(このケースは、客層が2つに分かれているため、お店のイメージを不用意に分散させたり、スタッフのオペレーションに悪い影響が出ることを気にするオーナーさんもいらっしゃるかもしれませんね)。


    いずれにしても、ここでの課題発見やプラン検討の例は非常に簡単なもので、本来はもう少し細かな分析・シミュレーションをして案を作るべきです。そうすることでプランがヒットする確率は確実に上がります。顧客情報をさらに細かく確認して、上記のグラフ上にプロットしてアイデアの妥当性をイメージするなど、簡単にできるところから始めれば良いと思います。


    また、(質を下げずに)来客数を増やせるのが理想です。このシミュレーションでは回転率が78%ですから、(スタッフの作業負荷を考えても)まだ数字を伸ばせる余地があるでしょう。ただし、回転率を極限まで上げたとしても、席数は有限です。売上を効率良く上げる(or 維持する)には客単価を上げるのが一番です(ちなみにここ最近上昇傾向に合った客単価は2010年8月は猛暑の影響で少し下げました)。


    ここでの例ではご紹介できませんが、別の視点ですが、かなり前から、顧客生涯価値(Life Time Value = LTV)・・・要は如何にリピート中心の集客・営業が重視されています。RFM分析が顧客管理との親和性が低いこともあり、顧客のデータをできるだけ細かく拾って、売上と顧客データの相関関係や、時間軸でトラッキングできるようにれば良いでしょう。


    こういったことに真剣に着手するためにはまずノウハウが必要と思われがちですが、少しずつ勉強していけば良いと思うのです。わからない場合はわかる人に聞くのが一番です(誰に聞くかは、大きな問題かもしれませんが)。それよりも勉強のための時間を確保する⇒従来の業務時間の構成を変えることの方が多くの場合、より大きな課題のように思えますが・・・(時間の使い方については以前の生産性に関するエントリーにコメントしていますので、そちらも参考になれば幸いです)。