以前、あるお店のWebサイトを作ったときに感じたことですが、Webサイト作りって、オーダーメイドでスーツを作るのに似ています。
スーツ作りにおいてはフィッティングが最も重要ですが、このフィッティングと全身のラインの美しさを共存させるのはなかなか至難の業です。本人の体型やフィット感を重視し過ぎると、全体のラインが損なわれる場合があるし、またその逆もあるわけです。
全体のバランスを最終的にどう整えるかはプロのテーラーに任せることになりますが、そこに至るまでの細々とした要件(例えば、ウエストのシェイプの位置、袖の長さ、ラベルの形など)はお客がはっきり示す必要があります。
Webサイト作りも同様だと思いませんか。
技術的なところはさておき、まずは、Webサイトで訴えるべきこと、訴えたいことをきちんと制作業者に伝えることが良いWebサイト構築への最初で最大の課題と言えます。
一方、正直なところ、今の日本の飲食店のWebサイトやブログはどこも似たりよったりのような気がします。これは日本国内の同業他社のWebサイトまでは参考にするけれど、イメージ止まりの場合がほとんどで、さらに具体的な要件に落とし込んだり、もっと他の事例を探してみる、などの努力が足りなかった結果ではないか、と感じています。
そこで少し、海外レストランのWebサイト中で、これは日本でもやってみれば良いのにな~といった感じを持ったWebサイト事例を少しリストアップしてみます。
日本のサイトでは見られないような独自のアイデア、工夫がそこかしこに見られるので、リニューアルや新たな立ち上げを考えているお店の参考になれば幸いです。
- NOMA
- 2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.1レストラン
- 北欧のレストランらしく柔らかなトーンに絞り込んだ色調とミニマルでコンパクトながらわかり易い画面とページの構成(まるでインテリアショップのWebサイトのような写真)
- 英語とデンマーク語に対応
- 予約フォームは無し(電話とeメールでの受付)
- Mugaritz
- モダン・スパニッシュを牽引するクリエイティヴさと実質感を両立する店(2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.5レストラン)
- 飲食店サイトをFull-Flashで作る場合の好事例。店への興味、訪問への欲求を確実に高めるクオリティの高さ
- 機能を犠牲にしない全体のデザイン。ただし、少し表示に時間がかかり過ぎる場合があるような・・・
- 予約用のフォームはあるがSSL非対応(残念)
- Martin Berasategui
- エル・ブリやムガリッツ同様、スパニッシュ・レストランの最高峰の1つ
- やはりFull-Flashで作っているが、Flashの欠点・不利を補って余りある仕上がり
- スタッフの仕事ぶりを伝える動画の出来も素晴らしく、その場に居るようなライブ感があり、訪問意欲を掻き立てる。写真の出来も秀逸
- トップ画面のナビゲーション・メニューが最初は非表示になっており、ユーザーインターフェースにおいてはMugaritzが勝るように思う
- 予約専用フォームは無いがコンタクトフォームがある(SSL非対応)。
- Charlie Trotter's Chicago
- 米国のスターシェフのフレンチレストラン(ワインの品揃えが素晴らしい)
- Webサイト自体は上記の3つと比べれば前時代的と言わざるを得ない
- 自身の強みを最大限表現するまでには至っておらず、サイトの更新頻度も落ちている模様・・・(寂しい)
- ナビゲーション/UIが悪い
- 地図データの掲載も無い・・・
- Wine and Chocolate Bar AYZA
- ニューヨークの小洒落たワイン&チョコレートバー
- アメリカのこのレベルの店らしく、facebookやtwitter、flickrなどをプロモーションに活用しており、facebookのファンになると初回訪問時にグラスワインを1杯サービス
- トップページにテキストで表現可能な店の特徴を全て掲載することで、SEOとLPOに対応
- バーチャル・ツアーは秀逸。店内が360度見回せる。正に仮想体験。
- OpenTableを採用しており、空席管理、SSL対応ともに完備
ついでに・・・というと失礼ですが、日本を代表する京都の三ツ星店も三つほど事例として挙げましょう(菊の井は良いお店だと思いますが、Webサイトはあまり特徴が無く、ありきたりだったので割愛しました)。
- 瓢亭
- 京都・南禅寺に400年前から続いている料亭
- フラッシュサイトであるが、小さなスクリーン・サイズへの対応に縛られた?
- よく言えば日本らしいミニマリズムを感じ、悪く言えば、情報を伝えるメディアでありながら隠された部分が相当多そうな気配を感じる
- 如何に日本らしい紫がかった(?)藍で埋めようとも空白が目立つ・・・
- ミシュラン三ツ星でありながら、英語対応がなされていない
- 同じ京都の三ツ星である嵐山吉兆との考え方の違いが表れているようで面白い
- 嵐山吉兆
- 湯木貞一が昭和23年に開店して以降、多くの名料理人を輩出した料亭
- 海外客を意識してか、英文が併記されている点が日本の飲食店サイトとしては秀逸
- 何度見ても、ランディングページのフラッシュとBGMが五月蠅く感じられ、店の雰囲気と合わない。海外客はこれを「Cool!」と思うのだろうか?
- ランディングページから次の階層に移る際、ワンクッションあるのがもどかしい
- 板前割烹 千花 ⇒ まさか千花がHP作っているとは知りませんでした(汗)
- 2011年度、ミシュラン関西で三ツ星を取得。60年続く京風割烹の老舗
- フラッシュはランディングページにのみ使用。日本語と英語に対応しているが、ランディングページのmetaデータは英語対応しておらず、英語でのSEO対策は頭に無い模様。
- 必要最低限の情報提供に留めている点は瓢亭に似ているが、画像が少なく興味を膨らませる要素が少ない
- 単なるミスだとは思うが、日本語ページと英語ページとで料理の値段が違う・・・Webサイトに掲載する情報の質に対する拘りが少ないことを感じさせます(もし、日本人と外国人で値段を意図的に変えているのであれば、それはそれで・・・ですが)
- 予約については、「電話で&日本語で」と明記しており、それはそれで良しでしょう
クオリティレストランの運営に携わるビジネスマンとしての位置付けは極めて重要ですし、このブログではそちらの重要性をアピールしてきましたが、それもお店やオーナー、スタッフの技量や拘りが十分に発揮できることを前提としてのもの。
長く続けていれば、良い状態の時もそうでない時もあるはずですが、それでも、クリエイターとしての美意識や「自分はこうなんだ、これで行くんだ」という自信もしくは確信を感じたいと思うのは私だけでは無い筈です。
安易に妥協せず、自店のホームページには自分の拘り以上のものを詰め込む気持ちでWeb制作業者と真剣に向き合って欲しいと思います。
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