どこのお店でも毎月、売上目標を設定されていると思います。
売上目標の数値がどの程度、意欲的な数値であるかにも依りますが、毎月、売上目標をクリアしているお店があるとすれば、それは素晴らしいことですよね。そういう店であれば、特に販売データや顧客データの細かな分析をしなくても、それほど大きな問題は無い・・・というのは間違いです。
調子が良くないお店であれば、状況を何とか改善するための切り口を探るために。好調なお店でも、その好調の原因を把握し好調を持続させ、中長期的な目標の達成のためには、常に経営状況を示すデータに対する感度を高めておく必要があります。
よく言われることですが、日々の売上データや仕入のデータを、ただ漠然と見ていても、原因や次の一手が見えてくるわけではありません。その経営指標の性質や優先順位によって、どのような見方をするべきなのかが変わります。もちろん、好調なお店とそうでないお店とでは、重視すべき経営指標も異なります。
対前年同月比で色々な数字が出されますよね。売上、利益率、客単価など。
これらだけを診ても、「去年より景気悪いから・・・」とか「8月は猛暑日が多かったし、海外旅行者が過去最高だったらしいし」などの現象や原因をただ受容するだけで終わってしまいます。さらなる不景気の長期化も予想されていますが、そのまま流されてしまっても「仕方が無い」という言葉で済ませたくないですよね。まずは今、持っているデータを診る視点(軸)を変えたり、周囲にあるデータと突き合わせたりして課題やその解決策が見えてくるかを確認し、データが不足していると判断できるなら、追加収集してみてはどうでしょうか。これらのデータを最大限分析・活用することで、既存資産を活かしつつ費用対効果の高い集客・販促を実行する手だてが少しずつ見えてくるはずです。
何か例を・・・ということで、以下のような基礎データを持つ、ビストロがあると仮定します。
席数 | 20 |
平均客席稼働率 | 78.0% |
平均客単価 | ¥8,000 |
月平均営業日数 | 25 |
このデータからどんな気づきが得られるでしょうか?
稼働率78%という数字の良し悪しを判断することもできません(= どこに課題があるのかもわからない)し、客席稼働率をどうすれば上げられるか、あるいは客単価をどうすれば上げられるかといった課題解決の動機付けになるような情報にはなりません(本来は平均原価率や損益分岐点がいくらなのかくらいは最低限はっきりするべきかと・・・)。
このデータにもう少し情報を追加して、以下では客単価における課題発見というストーリーをシミュレーションしてみます。
2つの売上構成のパターン(パターンAとB)があると仮定します。
客単価範囲 (円) | パターンA (人) | パターンB (人) |
2001~4000 | 38 | 63 |
4001~6000 | 68 | 102 |
6001~8000 | 113 | 84 |
8001~10000 | 72 | 40 |
10001~12000 | 53 | 23 |
12001~14000 | 29 | 12 |
14001~16000 | 11 | 29 |
16001~18000 | 6 | 37 |
来客数/月 | 390 | 390 |
客単価 | ¥8,000.0 | ¥8,000.0 |
どちらのパターンも客単価は8,000円ちょうど、来客数/月も同じ390人です。このデータをグラフ化してみます。
どうでしょう、表形式で見るよりも随分と視覚化されて色々な気づきや課題が見えてきませんか?
パターンAはこの店の中心顧客が客単価6,001~8,000円付近に分布するのに対し、パターンBは4,001~6,000円付近と16,001~18,000円付近の2つのピークに分布しています。これは平均単価だけを求めているだけでは決して気づくことが出来ないものだということがわかります。
パターンAの場合、10,000円以上の高額消費をしてくれるお客が少ないようなので、6,001~8,000円遣ってくれる中心客にグラスワインをさらに提案したり、チーズやデザート、食後酒を薦める案や料理とワインのマリアージュ・セットなども考えられるかもしれません。
パターンBの場合は、ちょっと高額なボトルワインを頼んでくれるお客が居そうです。ワインの格に合わせた中~上食材を使ったメニューの提供や、従来、低価格のボトルワインを注文していたお客がもう少しだけ手を伸ばし易いように、中価格ワインのラインナップを見直すのも良いかもしれません(このケースは、客層が2つに分かれているため、お店のイメージを不用意に分散させたり、スタッフのオペレーションに悪い影響が出ることを気にするオーナーさんもいらっしゃるかもしれませんね)。
いずれにしても、ここでの課題発見やプラン検討の例は非常に簡単なもので、本来はもう少し細かな分析・シミュレーションをして案を作るべきです。そうすることでプランがヒットする確率は確実に上がります。顧客情報をさらに細かく確認して、上記のグラフ上にプロットしてアイデアの妥当性をイメージするなど、簡単にできるところから始めれば良いと思います。
また、(質を下げずに)来客数を増やせるのが理想です。このシミュレーションでは回転率が78%ですから、(スタッフの作業負荷を考えても)まだ数字を伸ばせる余地があるでしょう。ただし、回転率を極限まで上げたとしても、席数は有限です。売上を効率良く上げる(or 維持する)には客単価を上げるのが一番です(ちなみにここ最近上昇傾向に合った客単価は2010年8月は猛暑の影響で少し下げました)。
ここでの例ではご紹介できませんが、別の視点ですが、かなり前から、顧客生涯価値(Life Time Value = LTV)・・・要は如何にリピート中心の集客・営業が重視されています。RFM分析が顧客管理との親和性が低いこともあり、顧客のデータをできるだけ細かく拾って、売上と顧客データの相関関係や、時間軸でトラッキングできるようにれば良いでしょう。
こういったことに真剣に着手するためにはまずノウハウが必要と思われがちですが、少しずつ勉強していけば良いと思うのです。わからない場合はわかる人に聞くのが一番です(誰に聞くかは、大きな問題かもしれませんが)。それよりも勉強のための時間を確保する⇒従来の業務時間の構成を変えることの方が多くの場合、より大きな課題のように思えますが・・・(時間の使い方については以前の生産性に関するエントリーにコメントしていますので、そちらも参考になれば幸いです)。
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