料理人の方が己の調理の技術を磨き続けるのは、自己満足的な部分もあるでしょうが、お客様の満足を与えるための最も大きな要因が「料理が美味しい」ことであり、かつそれがビジネスとしての成功への最短距離でもあることを感じている、あるいは知っているからでしょう。
それでも、リピート訪問理由の一位が「料理が美味しい」ことであるとしても、それだけを拠り所にして良い筈がありません。端的に言えば、料理さえ美味ければ良いなどということは絶対にありえません。クオリティ・レストランは食を中心とした、総合的なエンターティメントのための場であり、空腹を満たすための場では無いのですから。
私がお手伝いした飲食店さんのオーナーさんの中にも「結局のところ、リピートの決め手は料理ですよ」とおっしゃる方がいらっしゃいました。ですが、これは誤った考え方だと断言します。
「料理の美味しさ」は店を選ぶときの指標の一つに過ぎません。確かに最重要指標ではあるものの、他にも重視されている指標はあります。上記のリンク先を見ると・・・
- お店の雰囲気
- 料理が安い
- お店全体がキレイ
- 料理のメニューが豊富
・・・etc
色々ありますよね。
ランキングのトップに「料理が美味しい」が位置づけられており、「お店の雰囲気が良い」よりも上位にあることから、「料理が美味しい方がお店の雰囲気が良い店よりもリピートし易い」と勝手に都合良く読み取ってしまいがちではないでしょうか?
料理がいくら美味しくても、お店に清潔感が無ければお客は寄りついてくれないでしょう。「私と仕事、どちらが大切?」に代表されるような究極の二択のようなものとは程遠いということです。
また、客がそういう究極の二択に近い状態になることもそれほど多くは無い筈です(そこまで飲食に思い入れたっぷりな人は多く無いですよ・・・)。例えば、
- 店A
- 料理:そこそこで安い
- サービス:上等
- お酒:いまいち
- 場所:職場から近い
- 店B
- 料理:上等で値段は普通
- サービス:いまいち
- お酒:そこそこ
- 場所:職場からちょっと遠い(帰り道の途中というわけでもない)
こういう状態で、店AとB、どちらかを選ばなければならないとき、どちらの店が選ばれるかを言いきれる人なんて居ないでしょう?
クオリティ・レストランにとって料理の美味しさは生命線です。人間の身体に例えれば心臓でしょう。でも、心臓だけ守っていても、肝臓が悪くなれば様々な症状が表れますし、時には短期間で死に至る病にもなります。
集客を釣りに例えれば、美味しい料理を作る技術や心地良いサービスの技術は、竿や餌を準備している段階に過ぎず、餌を蒔いてもいないし、釣り糸を垂れてもいない状態であるということを早急に認識していただきたいと思う次第です。
今まで通りのことをやっていれば客が呼べる時代はとっくに終わっています。それ以上のことをやっているお店は既にやっているのですから・・・。
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