2010年6月2日水曜日

レストランにとっての見込み客(その2)

例えば、アパレルブティック(実店舗)で買い物をする場合の消費者の行動は
  1. 店に行く
  2. 店内の商品を見て回る/お店のスタッフとのコミュニケーション
  3. 試着する
  4. 購入するかどうかの判断
というフローが多いのではないでしょうか(もちろん、予めWebやマスコミなどからの情報を基にした後に「店に行く」かどうかを決めるプロセスもあるでしょう)。

消費の意志決定をするまでに直接、商品のサイズや着心地などを確認でき、しかもスタッフからのアドバイスも受けられる、ということは消費者にとって大きなメリットです。お店側のから見ても、接客を通して見込み客のフィルタリングや購入意思を高めるための働きかけ、そして何といっても商品に付帯する多くのコンテキストを含めた総合的な満足を顧客に提供することができます。

一方、飲食店はお客が来店するということは即、消費(売上)に繋がります。上記の順序で言えば、一度も来店したことが無いお客様に対しては1~2は現場で行えませんし、3の試着に相当する体験を提供する飲食店は無いに等しいと言えます。これらのことから、飲食店は、少なくともアパレルブティックとの比較においては、「見込み客との直接コンタクト」や「見込み客を育てる」といった点で明らかに見劣りする戦術しか実行できていないと言えます。

ゆえに1~3を色々な手法を使って「トライしてみる」ことが重要です。私はもちろん、無料でできる取り組みとしてWeb、ソーシャルメディアを活用することをお薦めします。

例えば、Twitterを使って「自店の見込み客に直接コミュニケーション」して「見込み客を来店客に育てた」事例としては既に牛角の西山社長が有名です。短期的な視点では実際の経営へのインパクトは小さいですが、さらに発展させられる余地があると考えます。

また、個人的にはレストランHPでのメニューの掲載の仕方はかなり改善余地があると思っています。例えば、「海亀のコンソメスープ」ならまだ見た目のイメージができますが、「エイとキャベツ」、はたまた「仔羊のマリアカラス風」という料理名と値段を載せるだけで読み手にどれだけの訪問を喚起させられるでしょうか?(ご存知の方にとってはどれもシェフの顔と署名が見えるような素晴らしいマスターピースですが・・・)。

実店舗への来店の際にはサービスの方がメニューの説明をしてくれるわけですが、上記のアパレルブティックとの比較を考えれば、メニュー選びという来店客の最大の楽しみの一つをWebで行え、店の個性を効果的に伝えられるような工夫をしなければ、訪問に対する強い喚起(=見込み客の醸成)には至らないのではないでしょうか。少なくとも私は今の多くのレストランHPのメニューは手抜きだと断じます。

ミシュランや食べログ、ザガットなどの普及で単純で定量的な比較は簡単にできるようになりました。しかし、あの店やこの店も星を取り、また食べログで3.5ポイント以上を取るようになった現在では、そこにあまり大きな価値が無いことはレストラン経営者もコアな飲食好きの方もとっくにわかっています。

もっと自店の個性と本質的な価値を再確認し、それを適切な形で訴求しなければ、本当の意味での差別化はできないし、見込み客を掴むための戦略もブレてしまいます(コアなファンも育ちません)。

出口の見えない不況の真っ只中、できることはもっと積極的にやっていきませんか?

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