2011年7月11日月曜日

【ワインねた】田中克幸氏のセミナー・レポート(混植・混醸について)~その2

前回の続きです。
田中克幸氏(以下、田中K氏)の混植・混醸(ゲミシュターサッツ)をテーマとしたセミナーでは以下の12種をテイスティングしました(写真が暗くてスミマセン)。


1) Wieninger Rosengartl Alte Reben 2006
2) Senteurs des Vignes 2009 / Albert Mann
3) Chateau Simone 2008
4) COSTAFAMALFI per Eva 2009 / Tenuta San Francesco
5) Scheherazade 2005 / Schloss Sommerhausen
6) The Jewels of Kisvin 2010 / Team Kisvin & Chateau Sakaori
7) Jassarte 2006 / Guado al Melo
8) Chateauneuf du Pape 2007 / La Fagotiere
9) Chateauneuf du Pape La Crau 2007 / Domaine du Vieux Telegraphe
10) Vallee d'Aoste Torrette Superieur 2009 / Anselmet
11) Bramaterra 2003 / Anzivino
12) Costasera Amarone Classico 2007 / Masi

それぞれのワインについて的を得た手短なコメントを記載できる能力はございませんので、私的な要所だけで失礼します。

1) Wieninger Rosengartl Alte Reben 2006
ゲミシュターサッツを代表するワインの一つに、Wieninger(ヴィーニンガー)が挙げられます。日本ではヘレンベルガーホーフによって正規輸入されており、その中でも、Nußberg Alte Reben(ニュスベルグ・アルテ・レーベン)は多くのワインプロフェッショナルから絶賛される、Wieningerの日本におけるフラッグシップと言って良いでしょう。

このセミナーでは日本に輸入されていないRosengartl Alte Reben(ローゼンガルテル)を利くという大変貴重な体験をすることができました。

Wieninger Rosengartl Alte Reben
一見、Nußberg Alte Rebenと同じのように見えますが、比べてみると明らかで、Rosengartl Alte Rebenのエチケットはピンク色なトコロがミソです(笑)。

この場では飲み比べることを目的としておらず、あくまでもゲミシュターサッツの代表的銘柄の1つとしてテイスティングしましたが、これがまぁ素晴らしい。

私はワインのテイスティング方法をきちんと習ったことがなく、我流以外の何物でもありませんが、これだけ大きな振幅の大きなウネリを誇りながら適度な角を定位置で維持し続けるバランス感覚は素人の私にも十分認識できるもので、確かに田中K氏がおっしゃるゲミシュターサッツの美点そのものと言えるでしょう(個人的にはNußberg Alte Rebenの方がより角張っているような印象です)。

田中K氏の解説によると、5つの品種から構成されており、Grüner Veltlinerが中心で、他はWißbrugunder、Neubruger、Traminer、Riesling。高貴品種のみから構成されているところに人為があるが、味わいは自然な統一感に貫かれている点が特徴だということです。

3) Chateau Simone (Blanc) 2008
Chateau Simone(シャトー・シモーヌ)というと、このクラシックなエチケットの影響(?)や、思ったよりも高価なこともあり、所謂ワイン愛好家の人からは(相対的に)縁遠い存在です。しかも、寂しいことに単なる南仏のワインという扱いでゲミシュターサッツで作られていて、しかも標高が高く寒暖差の大きな北向き斜面であり、しかも石灰質土壌である(=重くてベタついたワインを作るテロワールでは無い)ということはほとんど知られていません。

Chateau Simone (Blanc) 2008
実際に飲むと内側にしっかりとした立体的な構造が感じられ、平坦さや重さに類する味わいは全く感じられません。こちらのサイトに素晴らしい訪問記が記述されていますので、是非、ご覧ください。品種はクレーレット主体で他にグルナッシュ・ブラン、ユニ・ブラン、ミュスカ等によるものだそうです。

6) The Jewels of Kisvin 2010 / Team Kisvin & Chateau Sakaori
田中K氏曰く、「このワインはネタ(笑)」とのことです。


何しろ、使われている品種は39品種(驚!)。全てヴィティス・ヴィニフェラ系の品種だそうです。
まぁ、今は国産ワインブームであることですし、興味のある人が一生懸命テイスティングすれば、美点が見つかる可能性が高くなるでしょう(笑)。個人的には掴みどころが無いような感覚がありました。よく言えば、良い悪いという単純な判断を許さぬワインとでも言いましょうか(笑)。

9) Chateauneuf du Pape La Crau (Blanc) 2007 / Domaine du Vieux Telegraphe
南仏、パプが好きな私としては、このヴュー・テレグラフを正しく理解できているかどうかは重要でした。Chateauneuf du Papeは混植・混醸で作っているところもあれば、単なるブレンドワインとして作っているところもあります。ヴュー・テレグラフはもちろん、混植・混醸です。8)のCdPがブレンドワインだったので、比較ができました。

所謂、シャトーヌフ・デュ・パプで許可されている栽培品種のほとんどをLa Crauという素晴らしい畑で栽培しています。白はクレーレット、グルナッシュ・ブラン、ブールブラン、ルーサンヌによって構成されており、全ての品種が完熟しており、ゆえにアルコール度数も高いのですが、美点はそこにあるのではなく、タンニンのこなれ具合やゆったりとした複雑さは、単なるブレンドワインではあり得ないまとまり感。それで居ながら、つぶつぶとしたミネラル感を持った粒子が口内の粘膜を刺激し、非常に長い余韻を作っていました。

個人的には、もう少しアルコール度数を抑えれば、もっと美しい白ワインとして楽しめるのではないかと思いました。

その他にも、12)のMasiのAmarone Classicoなどは混植・混醸の赤ワインの素晴らしい成功事例として挙げられるでしょうが、やはり田中K氏が言う通り、今のところは(?)混植・混醸は白ワインの方が適しているように思いました。

果たして、このセミナーで一番人気だったのはどのワインなのか、そして混植・混醸というカテゴリーのワインがこれからどのように認知されていくのか、非常に興味深いと思いながら会場を後にしました。

2011年7月7日木曜日

【ワインねた】田中克幸氏のセミナー・レポート(混植・混醸について)

久しぶりにワイン関連ネタです(難易度は少し高いかも・・・です)。

6/18の昼下がり、西麻布「プロヴィナージュ」で開催された冷涼ワインセミナーを覗いてきました。講師は田中克幸氏(ワイン好きの方はご存知、ワイン雑誌「ワイナート)の主筆をされていた方です。以下、田中K氏)。

冷涼ワインとは「プロヴィナージュ」のオーナーである田中浩史氏(田中H氏)が「味わいの基軸が酸とミネラル感にあるワイン」の魅力を消費者にも知ってもらう主旨でこのような呼び方を始めました。厳密な定義をしようとするとこれがなかなか難しいのですが、「ひんやりとした感じがある、キレイで余韻の長いワイン」と言えば「あ~、なるほど」、と思っていただける方もいるのではないでしょうか。田中H氏のこの種のワインへの熱い思いに田中K氏が賛同する形で、セミナーという形式を通して、消費者の方と「冷涼ワイン」の共感・共有に努めていらっしゃいます。

今回は混植・混醸というテーマで田中K氏の解説を聞きながら、12種類のワインをテイスティングしました。

●混植・混醸とは?

  • ゲミシュターサッツ(Gemishtersatz)と呼ばれている。
  • 田中K氏はアルザスのマルセル・ダイス(J.M.ダイス)を訪ねたときに、Co-Planter(共植)という言葉を使っていのを聞いたことから、この言葉を思いついた。
  • 厳密に言えば、「一緒に植え」「同時に収穫し」「一緒に醸す」ことを指すだろうが、それらの条件が全て揃わずとも、これら3つの条件のいずれかを満たせば混植・混醸という呼び方をしても良いのではないか、という考え。
  • ローマ帝国以前、寒冷地でも十分に成育可能なブドウ品種を選抜して、遠征隊が持って行って育てた。その遠征の結果として西に行くほどブドウ品種は減っていったのだが、実はそれぞれの地域では自然交配や突然変異により様々なブドウ品種が同じ畑に植えられていた、という歴史もある。
  • この混植・混醸は決してオーストリアやドイツだけで行われているのではない。例えばコート・ロティ(シラーとヴィオニエ)、エルミタージュ(ルーサンヌとマルサンヌ)も然り、アルザスは周知の通り、イタリアでもヴァッレ・ダオスタなどでは当たり前。
  • しかし、一般的に見てもこれらのワインは高い評価を得ているとは言えない。理由は、混植・混醸のワインはテロワールを描くという観点に立った上でのワインの作り方であり、この考え方に沿った評価軸が未だに確立されていない点にある。
  • 従来の評価軸とは品種の個性を重視した結果のもの・・・例えば、アルザスではリースリングやピノ・グリなどの品種の観点から見て都合の良い畑としてランゲン・ド・タンやカステルベルグなどのグランクリュが設定された経緯がある。
何故、混植・混醸がテロワールをより鮮やかに描くことに寄与するのか?これは樹齢との関係もありそう。例えば、サンテミリオンの、あるワイナリーは以下の3つのタイプの畑を所有しているそうだ。

A)カベルネ・フランだけの畑
B)メルローだけの畑
C)カベルネ・フランとメルローを混植した畑

興味深いのはCのケース。Cの畑では一般的には収穫時期が異なる2つの種類のブドウが同時期に収穫できるそうだ。これは品種の違いに拘わらずブドウの熟度を揃えられるということにも繋がる。ただし、樹齢が50年程度経過した場合にのみ、それが可能になる、と。逆にA)とB)が同じ時期に収穫できることは全く無い。

収穫時期を同時にできることは人件費の抑制や作業の効率化、マストの均質な取り扱いが可能となる。そして、品種ごとに別に醸した後にブレンドするのではなく、混醸とすることで人為によるバランスではなく、自然なバランスの確立に寄与するという考え方である。

味わいの特徴としては
  1. 味わいの中心が真ん中にあり
  2. 縦の中心軸がしっかりとあり
  3. 立体感があり、余韻が長い
  4. 少しひっかかりがあるくらいのものもあるが、総じて味わいが動的(Dynamic)でうねりがある(対して、ただのブレンドワインは味わいが静的(Static))→人為に因らない、自然なバランスの確立

白ワイン品種での成功例は枚挙にいとまがないが、赤ワイン品種での事例の中には疑問を感じるワインもある(苦笑)。また、通常、補助品種として使われているものを主要品種的に扱って混植・混醸したものは品質的に少し劣るものがあるように思われる、との意見。

田中K氏の評論は論理的で仮説立証型、もしくは結論からアプローチするスタイルです。「ワイナート」での彼の論を読むと、結果を見て、あるいは仮説を立てて、その理由はかくかくしかじか、こうだからです~と述べていることに気付いている人もいるのではないでしょうか。もちろん、例外はあるでしょうし、異論もあるでしょう。ですが、この彼の現代的で、右脳と左脳がバランス良く機能した結果の評論スタイルはワインという嗜好品を論ずる際に非常に有効だと常々思っておりました。また、そのアプローチだけでワインの全てを語ることはできない、ということを彼自身が理解した上で語っていることも今回のセミナーで感じてました。

(今回はここまで。次はセミナーで紹介されたワインについて記述します。)