2010年12月12日日曜日

飲食店のツイッター活用への意見

このエントリーはツイッターを使って集客を試みているのに、効果が出ないと思っているクオリティ・レストラン関係者の方に読んでいただくことを想定しています。

ツイッターは機能面から見れば、非常にシンプルなツールです。

だからこそ、その使い方に対する理解が問われるものだと感じますし、その使い方を掘り下げて基本⇒応用を理解し、効果の程を分析した人しか+αの効果・価値を得るまでのプロセスは見えてきません。

日本でのツイッター黎明期に、豚組さんが飲食店として、いったんの成功を収めたのは皆さんご承知の通りです。代表の中村仁さんが様々なところでそのココロをお話されていますが、「そのココロ」を理解し、そこから何かを学んだ上でツイッターを運用されているクオリティ・レストランの方がどれだけいらっしゃるのか、しばしば疑問に思うことがあります。

そう感じる理由は、目的や優先順位が曖昧に感じられたり、継続への意志が感じられないからです。このブログでは折に触れ、これらの重要性に触れてきました。自分自身を振り返っても、やはりこれに尽きると反省することしきりなので、今後も触れることになるでしょう。

さて、ツイッターは、機能のシンプルさゆえに使う側に自由を与えています。しかし、ツイートされた何らかのテーマや記事を仲介しての人との繋がりが主な使用目的となっていることに疑いの余地はありません。

ですので、どういう繋がりか? 何をテーマに繋がりたいのか? どんな人と繋がりたいのか? を目的や優先順位として決める必要があります。これについては世の中の色々なアルファブロガーの方々がコメントしていますし、今更私がどこかの誰かがとっくに言及したような内容を欠く必要も無いような気もしますが、そこを敢えて。

飲食店の場合、集客を目的とした使い方をしたいと思った方も多いはずですが、集客という一言でまとめると曖昧過ぎます。ツイッター上での操作の一つ一つがAIDMAAISASといった購買行動モデルにおける各プロセスとどのような関係にあるのか、どのような意味を持たせるのかなども考え、理解すると良いのでしょう。

例えば、自分のお店のアカウントが誰かからフォローされることの意味を考えてみます。

  • フォロワーのタイプ
    • 同業他店(仲間/競合)
    • 取引業者
    • 既存客
    • 性別
    • 見込み客
    • ほぼ通りすがり・・・etc
  • フォローの動機
    • 知人、友人だから
    • 何だか素敵な男性(女性)がツイートしているなぁと(笑)
    • 過去のツイート全体に対する好印象
    • 直近のツイートを見て興味を持った(そのネタは何?)
    • どんなお店なのか、どんな人がやっているのか、どんなお客さんが居るのか知りたい、・・・etc
  • 流入経路
    • HPやブログなどから
    • 検索エンジンからの流入
    • 他サイトのリンクからの流入・・・etc

などなど。単にフォロワー数が増えるだけでは見込み客が増えることに繋がらないことがわかりますよね。誰がどういう動機で、どこを経由してフォローするに至ったかなどによって、お店からのアクションは異なる筈です。恐らく、皆さんも何となくそういったことに気付いているでしょう。

しかし、結局、お店のアカウントを使って、どのフォロワーに対しても十把一絡げのメッセージしか出さず、「そんなのメールでやりとりすればいいじゃない?」と思うようなナァナァなコミュニケーションがダダ漏れ状態で、内輪でまとまってしまっているのかな~と思うような雰囲気に包まれていたり・・・そういうの、心当たりありませんか?

とりあえずフォローしてみて、どんな感じなのか様子を見てから店に行くかどうか決めよう、と考える見込み客の腰を折ってしまうようなツイートに終始する飲食店関係者が案外多いことに驚いています。

ツイッターって知り合いとの単なるコミュニケーションツールだったのでしょうか?

そういう側面があることは否定しませんし、杓子定規なやりとりをするべきだ、などと言うつもりも毛頭ありません。経営者や従業員の人となりが感じられるようなツイートや生っぽいコミュニケーションはいいでしょう。全体として辻褄が合うのであれば、たまに毒を吐いてみるのも、キャパを拡げたりウマの合う人と深いコミュニケーションをする上で有効かもしれません。

でも、あなたのツイートが期待通りに、あるいは想定外の価値・効果を生んでいるかどうかをちゃんと見極めて、必要に応じて他の人と共有できるレベルまで昇華しないとあなた自身が何のためにやっているのかわからなくなるし、モチベーションも維持できないのではないでしょうか。

フォロワー数が一向に増えなかったり、あなたのツイートに周囲からの反応が無いのは、あなたのツイートに何か問題があるからだと考えるべきです。

フォロワー数は増えなくても良いという人も中にはいるでしょう。それはそれで結構です。だとすれば、ツイッターを使う目的の明確化、及び、どうであれば成功、あるいは効果が出ていると言えるのか、確認する方法や指標を定めておくべきです。例えば、一定期間内のフォロワー増加率なのか、リツイート/リプライ率なのか、フォロワーに占める一般(と思しき)の方の割合なのか・・・などですね。

一般の方からのフォロワー数が増えるということはAIDMAAISASで言う所のAttentionを上げたり、ファネルの口を拡げることに繋がるでしょうし、その指標の一つになり得るはずです。また、リツイートやリプライの数や割合はInterestを測定したり、購買までの心理・行動の遷移状態を把握することにも繋がるはずです。

このような効果測定手段を定めないと、「効果は?」と経営者に尋ねられても答えられないし、「時間かけてやってる割にダメじゃん」とか「ツイッターばっかりやって、遊んでるんじゃないよ」などと言われ、結果として効果があるのかどうか確たる結論を得られないままに運用をストップしてしまう例は多いように感じます。それで良いのでしょうか? PDCAの徹底の重要性はここでも問われているのです。

ツイッターなどの無料ツールは使用するまでの敷居は低い分、何が何でもそれを使って成果をあげるという執着も持ちにくい要素があるように感じます。だからこそ、それを真剣に使い切るかどうかで、効果に想像以上の差が生じるということを理解して欲しいですね。

ツイッターというツールが形成したコミュニティに今は人が集まっている、これは間違いのない事実です。クオリティ・レストランにおいては、今はまだツイッター活用ノウハウにおいて埋められないほどの差があるわけではないので、是非とも今の運用を見直して改善への足掛かりを掴んで欲しいと思う今日この頃です。

このエントリー、結果的にかなり平面的な内容に収めてしまいましたので、機会を見つけてまた触れたいと思います。次回はFESTIVINネタになります。

※もし、このネタの続きを早く読みたい、あるいは知りたいと思う飲食店関係者の方はメールなりお電話いただければ、ご説明に伺います(都内に限りますが)。

2010年12月8日水曜日

高品質と個性が地域の共存・共栄にも繋がるはず・・・という話

今に始まったことでは無い話ですが、東京周辺では都心部での出店はもちろんのこと、山手線の外側、あるいはもっと郊外で出店して頑張っているお店がたくさんあります。例えばフレンチだけに絞っても、平井の「レストラン・コバヤシ」、学芸大学の「ボン・シュマン」、池尻大橋の「OGINO」、浅草「オマージュ」、武蔵小金井「TERAKOYA」、国立「シエル・ド・リヨン」などが挙げられるでしょうか。

これらのお店に共通する特徴は、地域の中で唯一とも言える品質と個性を発揮しつつ、地域という枠から離れても最高レベルの料理を提供しており、その結果として、ガイドブックや食べログなどを見て来店するお客、そして地元のお客の両方をバランス良く獲得できていることではないでしょうか。

圧倒的な品質の高さを背景に地域のシンボル的な役割を果たしながら地元他店との共存を可能とし、より広い枠で捉えても他店との差別化ができる十分なレベルであるからこそ淘汰されない(=棲み分け、共存が可能)という構図も見えてきます。

私は兼ねてから、店の品質を高め、個性を確立することが競合力を高め、かつ他店との共存を図ることができると考えてきました。また、共存という考え方は魅力ある地域を形成する上でも必要で、魅力ある地域づくりが自店の維持・発展にも繋がると考えています。この考え方は銀座や西麻布、渋谷などの大商業地でこそもっと必要なのではないでしょうか。

例えば、銀座という地域を考えてみると、個人経営の店は初期投資が十分にできないため、家賃の高い中央通り沿いや通りから1ブロック以内程度の位置に店舗を構えるのはほぼ不可能です。再整備プロジェクトの進行に伴い、魅力的な個人店はどんどん中心部から離れた条件の悪い(?)エリアで出店せざるを得ない状況です。



銀座三越 増床後(広くなりましたね・・・)


東銀座 歌舞伎座工事完了後イメージ
(該当する1ブロックの90%くらいが工事中)

一方で、銀座の中心はどこに行っても買えるようなブランドショップなど多店舗展開型の店舗が居座り、どんどん個性の無い、魅力に乏しい街に変質しているような気がして寂しさを感じます(いくらそれぞれの店が商品数の多い旗艦店舗であっても)。銀座のような地域/街もまたレストランと同じように高い品質と独自の個性を発揮するべきだと考えており、このような「棲み分け」は異質なもの同士が地域内で密接することで得られていた相乗効果が失われているようにも感じます。

中心部の客層はこの2、3年で変わってしまいました。従来客が海外からの観光客に追い出されたという捉え方もできるかもしれません。

一方で、資本主義社会ですから、豊富な資金と展開力のある不動産デベロッパーによる再整備プロジェクトの進行は一つの流れとして受け止めるしかない部分もあり、完成した商業施設に入る店舗は高額な家賃の支払い能力を持つ無個性なチェーン店となる流れもこれまでのところ止まっていません。

個人的にはどうにかならないのか? と憤ることもあります・・・。

しかし、これらの流れをネガティブに捉えるだけでなく、高品質で特徴的な個性を持ったお店同士が地域内で交流し、様々な資源を共有することで、各店舗が共存し、あらゆる意味での相乗効果を互いに得られるのではないかと思うのです。

特定地域での滞在時間を長くしたり、有効な集客導線を作ることは間違いなくその地域での消費を促す原動力の一つのはずです。世代を問わず、良いものを求めるお客が集まる地域づくりなども視野に入れることが結果的にその場で長くお店を続けることに繋がり、せっかく身に付けた高い品質と個性の発揮にも繋がるような気がするのですが・・・どうでしょう?

そのためのヒントが先日開催された自然派ワインのイベント「FESTIVIN」にあったような気がするのですが・・・それはまた後日。

2010年11月30日火曜日

優先順位を決定する~その方法(その5)

ここ最近、バタバタしていて一連の優先順位ネタをまだ終えられていませんが、何とか11月中に全てポストし終えたいので、頑張ります。本エントリーは以下の4.について述べます。
  1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
  2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
  3. レームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
  4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
常連客の方からのはっきりとした要望や、たまのワガママは歓迎。普段仕入れないような高級食材を使った料理を馴染み客から作ってもらいたいと言われれば、何とか応えてあげたいというのが人情。しかし、その仕入にはリスクを伴いますし手間もかかる・・・オーナーからコスト削減を指示されていれば、気楽に請け負うことを躊躇する方もいるかもしれません。


カギは上記の設問を論理的に精査・分解することにあります。
この場合ですと、
  1. オーナー or 常連客 どちらを重視・優先するか? 
  2. 「コスト削減」と「高価な食材を仕入れるリスク」は比較するべきことでは無く、異質で別の問題だということ
    • 高価な食材を仕入れても、ちゃんと売ればコスト増にはならない(=回避策をきちんと考え、講じる)
の二つに分解することができると思います。
1.はシンプルな結論を要求していますが、実は2.は1.の問題に対して出した結論に対する理由・背景になり得るものであることに気付きます。


1.を単独の問題として捉える場合、二者択一ですからある意味シンプルです。しかし、判断に至る論理をしっかりと組み立てる必要はあります。前回のエントリーで紹介した緊急度と重要度のクロス分析を使って考えてみてはいかがでしょうか。


お客が目の前に居るサービスの現場ではお客への対応が最も緊急性の高いことは言うまでもありませんが、重要性は状況によって変わります。例えば、常連客がモンスター化してしまいワガママを押し通そうとし過ぎる場合には、店のコンセプトに従い、できることはできる、できないことはできない、と毅然と意志表示すべきです。そうでない場合は、少なくともお客と100%対峙してしまうような状況は回避すべきでしょう(サービス業なのですから)。いずれにしても、1.の解を得るにはもう少し情報が必要な気がします。


2.はどうでしょう? ちゃんと仕入れ値と量を業者と調整し、お客からいただくべきお代をいただけるならコストの問題は発生しないのでオーナーもハッピー、もちろんお客様の満足も得ることが出来ますよね。仮に少し失敗したとしても、具体的な集客策・リスク回避策を事前にオーナーと共有できていれば、オーナーからの評価は「ナイス・チャレンジ」になると思いませんか? お店の経営状態などからネガティヴに考えてしまう場合もあるかも知れませんが、店の目標やコンセプトを確認し、冷静に考えることでクリアできるはずです。


設問・課題を十分に理解したり、1.だけを考えるだけでは適切な解を得られないところでしたが、2.に気付き、課題のクリアに向けて前向きに考えれば、1.の解を得ることにも繋がるだけでなく本エントリーの設問全体への解を得られますし、「お客を満足させることでオーナー(そして自分)の満足も同時に得ることが出来る」ということもわかります。

こんなの大した話では無いと捉える方もいるでしょう。しかし、物事の優先順位を決める元となる価値基準や論理構築力を身に付けることは何らかの商業活動をする人の永遠の課題であり、かつ店の個性とクオリティを向上させる原動力の一つだと考えています。


※案外、ロジックがはちゃめちゃな料理人の方、多いと思いませんか・・・?

2010年11月25日木曜日

優先順位を決定する~その方法(その4)


今回は以下の3.について述べてみます。
  1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
  2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
  3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
  4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
ただし、一意に「これが一番重要なのだ!」と割り切れるものではありません。最後まで読んでいただくことで、自分のお店がお客とどのように接していくべきかを再考するきっかけになればと思っています。


さて本論です。
仕事の優先順位を決定する方法論として、重要度と緊急度の2つの視点からのクロス分析があります。具体的には以下のようなマトリクスを使います。


緊急度
高い 低い
重要度 高い (A) (B)
低い (C) (D)
  • 重要度も緊急度も高い - (A)
    • 問題と危機の両方がある
      • クレーム客への対応は正にこれ。
    • 営業時間中のお客様へのサービスもここに当てはまる
    • ただし、ここに当てはまる仕事に集中し過ぎると、それに振り回されてしまう
  • 重要度は高いが緊急度は高くない - (B)
    • お店の経営に例えれば、遠くない未来を左右すること
      • コンセプトの見直し、スタッフの教育、各種PDCAの定着など
      • 何かと先送りにされがちで、結果が出るまでに時間がかかることが多い
    • 問題の根本に関わる活動であることが多い
    • ここに時間を投資することで問題発生を未然に防ぎ、大きな成果を得ることが出来る
  • 重要度は低いが緊急度は高い - (C)
    • 電話対応や届いたメールへの返信などをイメージすると良い
    • とりあえず対応しなければならないが、重要度は内容確認後に判断
  • 重要度も緊急度も低い - (D)
    • やる必要の無い作業であり、かける時間を早急に最小化すべき
一般的に(A)の仕事は言葉は悪いですが「お尻に火が点いている状態」なので、何とかその場を凌ぎ切るものです。(C)も軽いものであることが多いので、何とかクリアできてしまうものです。


問題は(B)です。(A)や(C)にかまけて(B)をやらないでいると、気が付いたときには大きな問題を抱えてしまうことがあるので注意が必要です。
(D)に執心し、必要以上の時間を割くスタッフ(もしくはオーナー)は論外です。


ということで、(B)への取り組みが非常に重要であることを前提として、話を進めていきます。


一般的に客に重み付けをする方法としてRFM分析があります。
  • Recency(最終来店日)
  • Frequency(来店頻度
  • Monetary(累積購買金額)
この3つの指標毎にお客をセグメント分けするものです。以下はそれぞれの指標を5段階で分けたサンプルです。

Recency


(最終来店日)
Frequency


(来店頻度)
Monetary


(累積購買金額)
Level 5 最終来店日が
30日以内
1か月毎 10万円以上
4 最終来店日が
31~90日以内
3か月毎 5~10万円未満
3 91~180日以内 半年毎 3~5万円未満
2 181日~1年以内 年に1度 1~3万円未満
1 1年以上前 それ以上 1万円未満


例えば、R=5, F=5, M=5に分類されるお客様はお店にとって優良客と呼べるかもしれませんが、R=1,F=1,M=5はどうでしょう? R=1,F=1,M=1はお客と呼ぶこともできないかもしれません。


このようにお店との関係をRFMという指標からお客を分類し、それぞれに見合ったアクションを起こす手法・考え方が普及しています。具体的にアクションとは以下のようなことを指すでしょう。
  • 集客施策(時候のDMやメルマガ送付を含む
  • 予約受付
  • 現場でのサービス
  • ソーシャルメディアその他でのコミュニケーション
  • 御礼/お詫び・・・など
これらのアクションを通して、お客との関係を深化させ、LTV(顧客生涯価値)や売上を最大化させるのがこの分析の主旨なり目的です。

しかし、こちらの記事にもありますように、RFM分析は「個」客に着目した分析では無く、定めた条件でお客をランク分けをしただけのものと言えます。逆に、ランク分けの条件に適合しなくとも、ちょっとした働きかけで優良客となる可能性のあるお客が居る場合もありますので、必ずしもRFMといった指標に拘らず自店の特性に合った指標でお客を分類し、最適なアプローチを目指せば良いのです。


しかし、そもそも、顧客管理がかなり高いレベルで行われないとRFM分析はできません。どうにか分析できたとしても、その結果が活かすこと(=各顧客セグメント毎への有効なサービス提供の検討・実施に至らない)は困難です。今さらながら、顧客管理がきちんと為されているかどうかが非常に重要なのです。


もう少しこの点を掘り下げてみましょう。


※クリックで拡大できます
上図はAIDMAAISASを説明する際によく使われる漏斗(ファネル)で表現される購買に至るまでの心理状態の遷移や集客モデルを飲食店(や実店舗型商店)でのそれに合うように独自にモディファイしたものです(そんなエラそうなものでも無いですが・・・)。


従来、AIDMAやAISASの理論の中では、PRやコミュニケーションの目的は「購買を促すこと」だったと思います。確かにそれは短期的な目的として間違っていませんが、マーケティングの定義を「中長期的に売れる仕組みを作ること」と考えている私は「常連客の増加による集客・売上の安定化」を目的とした図にしてみたわけです。


最初のゴールは未訪客を来店に導くことです。ですが、「常連客の増加による集客・売上の安定化」をセカンド・ゴール(もしくは最終ゴール)とするならば、初めて来店してくれたからといってただ喜んではいられません。言うまでも無いことですが、実際に来店いただいた時間はFace to Faceでコミュニケーションできて、精一杯のサービスができる最良の集客プロセスの現場です。予約時、もしくは来店時に、来ていただいたお客様の顧客情報などを取得するタイミングもここしかありません。

しかし、繰り返しになりますが、多くの個人経営店では顧客情報の収集・管理・活用が十分に出来ていません。一般的には新規客の獲得が難しいと言われていますが、この顧客情報の管理の不備により、リピート客獲得の方が難しいのではないか(もしくは店によってはリピートのためのサービスをする気が無いのではないか)とさえ思う場合があります。

このような状態になっている原因は、顧客管理が本エントリーの一番上の表中の(B)の象限(重要度は高いが、緊急度は低い)に当てはめているからではないでしょうか。

顧客管理ができていないということは、新規客/リピート客/常連/クレーム客に関わらず、実は「個」客を軽視し、サービスの重要性や価値を認識できていない可能性が高いと思われます。これらの分類はどれが重要かを判断するためのものでは無く、「個」客が上記のプロセス上、どの位置に居るかを判断し、プロセスに応じて最適なサービスを提供することで次の来店を促すためのものと考えるべきです。その考え方に基づけば、クレーム客に対して、その場しのぎの対応をするのはタブーなことは言うまでもありません。

    2010年11月12日金曜日

    優先順位を決定する~その方法(その3)

    このエントリーでは、以下の「2. 販売とマーケティング、どちらが重要?」について述べます。
    1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
    2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
    3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
    4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
    飲食店ではマーケティングという概念自体があまり一般的では無いため、マーケティングというものを改めて整理してみます。

    新作料理が定番化するプロセスはPDCAサイクルそのものだと思いませんか?
    1. 新作メニューを考える(Plan)
    2. 実際に作って、お客に販売する(Do)
    3. 食べてもらったお客の評判に耳を傾ける(Check)
    4. マイナーチェンジ(改善)を繰り返す(Act→Plan→Do→Check)
    5. お客の評価が向上し、注文が増え、最終的に定番メニューとして定着する
    マーケティングを「売れる仕組み作り」と考えれば、PDCAを実行し、定番メニューを作る(=売れる商品を作る)ことはこの定番化プロセスは正にマーケティングの賜物と言えます。

    で、販売は上記のとおり、2のDoの部分ですね。つまり、販売はマーケティングの一部であると考えられるわけです。こう言うと、一般企業の営業の人は「営業が売らなければ金入ってこないんだから会社は俺たちが支えているんだよ!」と怒られたりするのですけれど(笑)。実際の所、運転資金が潤沢でないことの多い、個人経営の飲食店では、この販売プロセスが無ければPDCAサイクルもマーケティングも成立しないので、販売は非常に重要であることは間違いありません。

    これだけでもマーケティングは十分に広い領域をカバーしているわけですが、これはモノを売るプロセス面からの捉え方であるに過ぎませんし、「売れる仕組み作り」と定義として完結してしまうには問題があります。様々な書見から、以下の3項目を満たすものがマーケティングの定義として適していると考えます。
    • 顧客を起点にした売れる仕組み作り
    • 研究、開発、製造、人事、財務、営業などの経営を構成する各機能をコントロール
    • 経営者の理念や経営の目的を表現する手段
    ITを含め、マーケティングを図で表すと以下のような感じかと。

    ※何かの本を元に私がアップデートしたものです
    プロセスとしての販売・マーケティングではなく、機能としての位置付けも加味するとマーケティングは非常に広い領域をカバーしているということです。上図の研究、開発、製造、人事・・・といった各機能はマーケティングという概念に基づき、相互に関連しながら並行して実行することで組織が経営目標を達成に近づくことが出来るようになります(各機能がシリアルにしか動かないとすれば、組織を構成する意味がありませんよね)


    例えば、ある高額商品を売るために必要なスキルセットを確認し人材を確保するのは人事の仕事ですが、そのベースに「売れる仕組み作り」に必要な人材確保、と捉える必要がありますし、財務・会計においても安定的にモノを売るバックボーンとして、毎月の運転資金の確保や支払いサイトなどを調整しなければならない、ということです。

    尤も、個人経営の飲食店では研究、開発、製造、人事・・・の全て役割ををオーナーや店長がこなさねばならないわけで、工数を考えると、必ずしも全ての機能・役割が同時進行するとも限らないのが難しいところです。


    これらを踏まえて、結論です。


    販売とマーケティング、どちらが重要? という質問に対しては、組織内でマーケティングのなんたるかがきちんと理解されており、その上で、ということであれば販売の方に注力して良い筈。マーケティングを単なる広告とかりサーチといった程度にしか理解していない場合は、まずはマーケティングに対する正しい理解が重要。


    優等生的な回答としては「どっちも重要」だけど、影響範囲の広さ・深さ、経営のベースにあるべきもの、という観点から見ればマーケティングの重要さは明らかでしょう。

    2010年11月9日火曜日

    優先順位を決定する~その方法(その2)

    前回のエントリーの質問、色々お考えいただけましたでしょうか?
    1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
    2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
    3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
    4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
    繰り返しになりますが、これらの質問に対して完璧な解答はありません。
    ぎゅっと凝縮させると、これらの問いに対しては全て一つの回答で事足りるはずというのが私の考えですが、それでは余りに概論過ぎるので、一つ一つ述べていきたいと思います。


    このエントリーでは、1.今期目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?について、記載していきます。
    • 目的と目標は違う
      • 目的
        • 経営の礎となるもので、「何のために行動するのか」を定めるものであり、変化の割合は比較的小さい(ex.収入を得るため、社会への貢献、自分の修行経験やアイデアを思う存分発揮する場を持つため、など)
      • 目標
        • 目的に沿って行動することによって、どのような結果を得るか(ex.収入をどの程度得るか、売上をどの程度伸ばすか、来店客の何割が満足してくれているか、など)
        • 指標と数値によって表現されることがほとんど(また、出来る限り表現されるべき)
        • 目標はその達成の程度や市況などによって変化する
    • 価値は目的と目標を元に生まれる成果である、と捉える
      • 目的に沿って行動し、目標を達成すること(お客、市場からの認知・理解・支持の程度を含む)によって得られるもの
      • 目的・価値・目標は相互に関連する(上図の緑の矢印)
        • 目標を達成することで、価値が増大し、場合によっては後に経営の目的自体にも加わえられる場合もある
    繰り返しになりますが、目的は経営の礎であり、それによって店のコンセプトにも影響してきます。私がコンサルティングさせていただく際には、開業目的や事業計画を重視しており、それらに矛盾があると感じた場合には、そこからまとめさせていただき、最初のソリューションを提案させていただくようにしています。

    これらを踏まえて、今期目標と中長期目標の関係を考えてみます。
    • 今期目標の一本の延長線上(同一ベクトル上)に中長期目標があるのか?
      • 同じベクトルにあれば理想的だが、経営に与える外的要因(機会・脅威)は常に変化し、早急な追加対応を迫られる場合が多い(特に最近)ため、放っておくとズレる
        • 例えば、2010年夏であれば野菜の流通不足とそれによる卸値の高騰、食べログやブログなどのソーシャルネット上で発生する悪評への対応など
          • 昨今の日中関係・尖閣問題を引き合いに出すと、戦略的互恵関係の確立がここで言う所の中長期目標に当たる
          • そのベクトルからずれないような直近の尖閣問題の解決をもくろんだが、火消しを(結果的に)場当たり的に行ってしまったため、マスコミ対応や世論形成など、中長期目標達成には、より複雑な障害( or ズレ)が生じてしまった
        • このような悪しき例を踏襲しないように当面の対応~今期目標~中長期目標の整合性は定期的に確認し、ズレを修正する必要がある
      • 今期目標達成への取り組みと中長期目標達成への取り組みは並行して実行されるべき場合が多い
        • 今期の目標をクリアして、その次に中長期目標への取り組みにかかる、といった順序性が必要なものはそれほど多くない
        • 例えば、ネットを使った集客施策は結果がすぐに出ないケースも多く、経過を見ながら通年で継続的に改善・対応していくべきものである
        • 顧客生涯価値(LTV)という考え方・指標が注目されている。一人のお客様が中長期で何回リピートしてくれるか、お客としっかりとした関係を築けるか、などの重要性が増している
          • 短期での投資回収を目指す姿勢は必要だが、長く経営を続けることを前提に収益設計するビジネスモデルに移ってきている(長く続けること自体が目的化しつつある)
        • 一方で、潤沢な運転資金のある飲食店は多くは無く、今期の売上・利益を着実に確保することが店の存続や継続的に経営目的を果たしていくことに直結する
    では、本件に関する私の結論/提案です。

    • 経営目的や経営計画の質が一定水準に達していなければ、早急にこれらをまとめ、関係者間で共有しておくことが一番重要
    • これらが一定水準に達しているなら今期目標に対しては70%前後のウエイトで、中長期目標に対しては30%前後くらいの配分並行して進めていく
    • ただし、中長期目標達成に向けてのアクションの進捗状況と、今期目標の実行状況と中長期目標との整合性を定期的(月ごと、四半期ごと)に確認するべき
      • 今期目標達成のために(あるいは致命傷を負わないために)、実行する施策が場当たり的・スポット的なものでは無駄なコストになる可能性があるため。
    ある意味、これらはありきたりな正論ですが、他により有効な考え方があると感じたことがありませんし、実行できているケースも非常に少ないのが実状です。腹を決めて実行するなら、その取り組みが継続できなければ意味がありません。力のあるコンサルタントであれば、そのためのノウハウを持っているはずですので、コストの折り合いが付くのであれば活用を考えると良いかもしれません。

    2010年11月3日水曜日

    優先順位を決定する~その方法(その1)

    飲食店で働いている人でも、スキルが高いほど、手と頭が独立して動いている ~ 同時に複数の仕事が出来ているように思います。

    例えば、お店のシェフであれば、
    • 今、手でフライパンでポワレしている
    • 同時に頭で次の段取りを考えている
    • そして、部下の動きにも目を配り、必要に応じて叱咤し、指示を出す

    ※写真はあくまでもイメージです
    こんな感じですね。
    あれは、慣れという言葉だけで表現するのは不適切で、スポーツや楽器演奏と同じようにトレーニング・修行、そしてそうすることへの明確な動機付けがあってこそなせる業です。そして、脳の複数の箇所(右脳/左脳/前頭葉など)が同時に動作するような形になっているからに違いありません。

    頭で考えることが中心のデスクワークではそうは行きません。
    • 複数のプロジェクトに参加したり、性質の異なる仕事(例えば、日々の店舗運営に加え、レシピ本の出版準備をするなど)を同時に抱えることと、ある瞬間に脳の内部で複数のことを「考える」ことは別の話である。
    • そもそも、人間の脳は、2つのタスクならば同時に処理できるが、3つ以上のタスクに取り組むのは能力を超える(という研究がある)。
    • 複数のプロジェクトに参加する、という観点で捉えてみても、プロジェクトAのこととプロジェクトBのことを完全に同時に進行させるのは不可能で、結局、脳はそれぞれのために「切り替え」が必要となる
    これらは思い当たるフシが誰しもあるのではないでしょうか。

    上記を前提にお店の経営上、複数のToDo(やるべきこと)を上手い具合に進行させるために、優先順位をどのように決めるべきかを考えてみたいと思います。多分、何回かに分割することになると思いますが)。

    さて、質問です。
    1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
    2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
    3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
    4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
    どの質問も絶対的に正しい答えがあるわけではありません。
    今の知識、考え方を元に一度ご自身でまとめていただければ結構です。

    次のエントリーでこれらの答え(?)というか、私なりの考え方(お薦めしたい考え方)を述べさせていただきますので、乞うご期待!?

    しっかり考えておいてくださいね。

    2010年10月30日土曜日

    データを読む/魚群は動いている

    昨日、日テレのニュースで女性の36%が外食回数を減らしているというトピックがありました。
    ウチご飯やお弁当などのキーワードが飛び交っている様から見ると、確かに減っているだろうなぁという気がします。ただし、36%という数字は私の感覚には馴染みが悪く思えます。

    一方でぐるなびがぐるなび総研という会社でリサーチビジネスをやっています。
    こちらの「外食費(夏)」というレポートを読むと、「この夏(78月)の外食費は「増える」が「減る」を上回り、増加傾向」という論調。また「景況感」というレポートには景気は回復傾向だが、厳しい業績続く」というサマリーが。

    • 外食産業の現状をどの言葉が正しく言い表しているのでしょうか?
    • 特にクオリティ・レストランの市況はどうなのでしょう?

    まず、これらの統計データ、調査データ自体の信ぴょう性は疑ってみても良いのではないでしょうか。

    最初の36%減の話は東京ガスの調査データであるという事実に目を向けなければなりません。

    昼食を外で食べる回数が1回減っても、10回減っても「外食回数が減った」という一言でまとめることもできます。でも、外食産業に与える影響が1回減と10回減のどちらが大きいかは明らか。つまるところ、必ずしも女性による外食産業の総利用量が36%縮小したわけではないということです。

    東京ガスの場合、ガスをたくさん使ってもらいたい、あるいは使用量が増えているということを何らかの形でアピールしたい筈で、女性の外食が減っている⇒家庭でのガスの使用量が増えている⇒「安価な熱源の都市ガスはこんな時代に最適ですよ!」と暗に言いたいだけ(要は恣意的なデータである)と言うと斜視し過ぎでしょうか(?)。

    一方で、ぐるなび総研のレポート。
    まず、「外食費(夏)」という調査データはあくまでも201071620日に採取したデータである(予想データである)ということです。「外食産業を盛り上げよう」、「誰もが苦しむ夏もお客は外食をする気があるのだから頑張ろう」という意図の元、公開されたデータなのでしょう。要は「飲食店さん、ぐるなびのサービスを利用してください」という意図が汲み取ることが出来ます。

    もう一つのレポート「景況感」については、あくまでもぐるなび加盟店を対象にした調査です。その中で
    • 売上:増加の傾向22%(昨年8月比+5%)
    • 利益:増加の傾向19%(昨年8月比+6%)
    • より良質なメニュー:好調店33%(不調店22%)
    • 料理の値下げ:不調店26%(好調店7%)

    と言っているだけに過ぎないわけです。このデータも「ぐるなびを利用している飲食店さんはこんなに調子良いですよ、皆さん、利用しませんか?」というメッセージなのではないでしょうか。

    元々、TVに出た36%という数字の大きさに反応して調べ始めたわけですが、さて、この3つのレポートを総合すると要は「外食産業は依然として厳しい状況下にある」ということが言えますが、女性云々という部分を明らかにするにはもうちょっとデータが欲しいですよね。そこで探したところ、やはりぐるなびのレポートでありました。2008 - 2009年のデータですが「第2回レポート「属性別分析」」が。

    これを見ると・・・
    • 女性の昼食での外食機会も減り、多くの世代で支払額も減少している。

    • 女性の「ゆっくりの夕食」の頻度も減り、多くの世代で支払額も減少している。


    • 女性はプライベートの外食機会を大切にする
    • 高所得層は外食の機会を多く持つ(以前と比べて減っているかどうかは不明)。


    ということが読み取れます。

    このように見てくると、ここ1年くらい流行っている「女子会」もかなり絞られた機会であることが判りますね。飲食店は以前よりも小さくなったパイを取り合っているということです。

    とすると、自分のお店がターゲットにするべき客はこのままで良いのか再考する必要があるかもしれませんね。例えば、以下のデータを見ると、自分で料理をする機会の少ない20代男性の独り客はお酒の消費量は少ないもののひとりでのふだんの外食を大事なものと考えているようですから、地域性やお店のスタッフとの世代差などを考慮して、そういうニーズを満たす施策を実行するのも良いかもしれません。

    要は「魚群(ターゲット=お客)は動いている(はず)」ということ、そして「動いているのは位置・規模共に」ということですね。自分が持っている釣り道具(=施策)や漁場を変えないと狙った獲物を釣ることはできませんし、獲物自体も変える方が良い場合もあります。内部にあるデータ、上記のような外部データをうまく読み取っていく必要があるわけです。

    2010年10月28日木曜日

    居酒屋って凄い

    酒の消費量が減っていると言われ始めて結構、時間が経っています。

    最近では、サントリーがハイボールに活路を見い出す一方でキリンがビール販売の不振により栃木工場を閉鎖するなど、日常を彩るお酒の種類が確実に変わっているとも感じます。

    こういった流れと(良くも悪くも)あまり関係が無いのが、「●●料理店」でしょう。
    ●●には日本、フランス、イタリアなどが入ります。

    日本料理店ではワインを常備するお店も増えましたが、やはり日本酒、焼酎、ビールが中心でしょうし、フランス料理ではワインが圧倒的(たまに日本酒を置いているお店がありますね)。

    中華料理は比較的ベバレッジに対して柔軟のような気がします。紹興酒という地元のお酒があるにも拘わらずこのようになっている理由は様々考えられますが、やはり、日本人が紹興酒に対してまだ馴染みが薄いことが原因ではないでしょうか。


    - 居酒屋の可能性 -

    料理を中心に考えるとベバレッジを縛ってしまう場合が多い一方で、居酒屋という業態はどんな酒を置いてもその場に対する馴染みが良く、またどんな料理を作っても違和感がありません。居酒屋という業態はお酒×料理の組み合わせの自由度が非常に高いのです。前菜からメインまでの流れも、途中でのオーダー追加も、料理毎にお酒を変えるのもお客の気分次第で出来てしまうわけです。

    これって、居酒屋だから当り前なのですけれど、改めて考えると凄い業態だな、と思いませんか?

    例えば、鮎の塩焼きに対しては、日本酒を合わせても良いですし、川魚の風味やカルシウムに拮抗する白ワインを合わせても良いでしょうし、生牡蠣と白ワインの組み合わせに疑問を持っている人に対しても様々な提案が可能です(それこそ、自由という観点ではハイボールとの組み合わせにチャレンジしてみても良いかもしれません)。

    料理人に腕と柔軟性があれば、居酒屋の厨房にあると思われる炭床を使って、肉を焼いても良いですし、本質がブレなければ色々な創作料理を作ることができ、さらに、それらの料理にサービス担当が幅広い選択肢から合うベバレッジを選ぶ技量があれば、これはかなりの可能性を持っているのではないでしょうか。

    実際、そういう力を持った居酒屋は確実に増えています。


    ※どちらの写真も単なるイメージです
    カジュアルでありながら、しっかりと仕事された料理とベバレッジという武器は今の外食不況においても十分な威力を持っている筈。●●料理店の既存客がそちらへ流れるという可能性も十分にあると思っています。

    居酒屋も、そうでないお店も頑張れ~。

    2010年10月26日火曜日

    海外レストランのWebサイト事例

    以前、あるお店のWebサイトを作ったときに感じたことですが、Webサイト作りって、オーダーメイドでスーツを作るのに似ています。

    スーツ作りにおいてはフィッティングが最も重要ですが、このフィッティングと全身のラインの美しさを共存させるのはなかなか至難の業です。本人の体型やフィット感を重視し過ぎると、全体のラインが損なわれる場合があるし、またその逆もあるわけです。

    全体のバランスを最終的にどう整えるかはプロのテーラーに任せることになりますが、そこに至るまでの細々とした要件(例えば、ウエストのシェイプの位置、袖の長さ、ラベルの形など)はお客がはっきり示す必要があります。

    Webサイト作りも同様だと思いませんか。
    技術的なところはさておき、まずは、Webサイトで訴えるべきこと、訴えたいことをきちんと制作業者に伝えることが良いWebサイト構築への最初で最大の課題と言えます。

    一方、正直なところ、今の日本の飲食店のWebサイトやブログはどこも似たりよったりのような気がします。これは日本国内の同業他社のWebサイトまでは参考にするけれど、イメージ止まりの場合がほとんどで、さらに具体的な要件に落とし込んだり、もっと他の事例を探してみる、などの努力が足りなかった結果ではないか、と感じています。

    そこで少し、海外レストランのWebサイト中で、これは日本でもやってみれば良いのにな~といった感じを持ったWebサイト事例を少しリストアップしてみます。

    日本のサイトでは見られないような独自のアイデア、工夫がそこかしこに見られるので、リニューアルや新たな立ち上げを考えているお店の参考になれば幸いです。
    • NOMA
      • 2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.1レストラン
      • 北欧のレストランらしく柔らかなトーンに絞り込んだ色調とミニマルでコンパクトながらわかり易い画面とページの構成(まるでインテリアショップのWebサイトのような写真)
      • 英語とデンマーク語に対応
      • 予約フォームは無し(電話とeメールでの受付)
    • Mugaritz
      • モダン・スパニッシュを牽引するクリエイティヴさと実質感を両立する店(2010年度、World's 50 Best RestaurantsのNo.5レストラン)
      • 飲食店サイトをFull-Flashで作る場合の好事例。店への興味、訪問への欲求を確実に高めるクオリティの高さ
      • 機能を犠牲にしない全体のデザイン。ただし、少し表示に時間がかかり過ぎる場合があるような・・・
      • 予約用のフォームはあるがSSL非対応(残念)
    • Martin Berasategui
      • エル・ブリやムガリッツ同様、スパニッシュ・レストランの最高峰の1つ
      • やはりFull-Flashで作っているが、Flashの欠点・不利を補って余りある仕上がり
        • スタッフの仕事ぶりを伝える動画の出来も素晴らしく、その場に居るようなライブ感があり、訪問意欲を掻き立てる。写真の出来も秀逸
        • トップ画面のナビゲーション・メニューが最初は非表示になっており、ユーザーインターフェースにおいてはMugaritzが勝るように思う
      • 予約専用フォームは無いがコンタクトフォームがある(SSL非対応)。
    • Charlie Trotter's Chicago
      • 米国のスターシェフのフレンチレストラン(ワインの品揃えが素晴らしい)
      • Webサイト自体は上記の3つと比べれば前時代的と言わざるを得ない
        • 自身の強みを最大限表現するまでには至っておらず、サイトの更新頻度も落ちている模様・・・(寂しい)
      • ナビゲーション/UIが悪い
        • 地図データの掲載も無い・・・
    • Wine and Chocolate Bar AYZA
      • ニューヨークの小洒落たワイン&チョコレートバー
      • アメリカのこのレベルの店らしく、facebookやtwitter、flickrなどをプロモーションに活用しており、facebookのファンになると初回訪問時にグラスワインを1杯サービス
      • トップページにテキストで表現可能な店の特徴を全て掲載することで、SEOとLPOに対応
      • バーチャル・ツアーは秀逸。店内が360度見回せる。正に仮想体験。
      • OpenTableを採用しており、空席管理、SSL対応ともに完備
    ※ちなみにFat DuckのHPもクリエイティブで面白いです。

    ついでに・・・というと失礼ですが、日本を代表する京都の三ツ星店も三つほど事例として挙げましょう(菊の井は良いお店だと思いますが、Webサイトはあまり特徴が無く、ありきたりだったので割愛しました)。
    • 瓢亭
      • 京都・南禅寺に400年前から続いている料亭
      • フラッシュサイトであるが、小さなスクリーン・サイズへの対応に縛られた?
        • よく言えば日本らしいミニマリズムを感じ、悪く言えば、情報を伝えるメディアでありながら隠された部分が相当多そうな気配を感じる
        • 如何に日本らしい紫がかった(?)藍で埋めようとも空白が目立つ・・・
      • ミシュラン三ツ星でありながら、英語対応がなされていない
        • 同じ京都の三ツ星である嵐山吉兆との考え方の違いが表れているようで面白い
    • 嵐山吉兆
      • 湯木貞一が昭和23年に開店して以降、多くの名料理人を輩出した料亭
      • 海外客を意識してか、英文が併記されている点が日本の飲食店サイトとしては秀逸
      • 何度見ても、ランディングページのフラッシュとBGMが五月蠅く感じられ、店の雰囲気と合わない。海外客はこれを「Cool!」と思うのだろうか?
      • ランディングページから次の階層に移る際、ワンクッションあるのがもどかしい
    • 板前割烹 千花 ⇒ まさか千花がHP作っているとは知りませんでした(汗)
      • 2011年度、ミシュラン関西で三ツ星を取得。60年続く京風割烹の老舗
      • フラッシュはランディングページにのみ使用。日本語と英語に対応しているが、ランディングページのmetaデータは英語対応しておらず、英語でのSEO対策は頭に無い模様。
      • 必要最低限の情報提供に留めている点は瓢亭に似ているが、画像が少なく興味を膨らませる要素が少ない
      • 単なるミスだとは思うが、日本語ページと英語ページとで料理の値段が違う・・・Webサイトに掲載する情報の質に対する拘りが少ないことを感じさせます(もし、日本人と外国人で値段を意図的に変えているのであれば、それはそれで・・・ですが)
      • 予約については、「電話で&日本語で」と明記しており、それはそれで良しでしょう
    こうして改めて見てみると、店の前を通りがからずとも、目にする機会があるWebサイトは外装以上の拘りが必要なもので、予算の許す範囲でお店の魅力を最大限に引き出したものであるべきだという気がしませんか?

    クオリティレストランの運営に携わるビジネスマンとしての位置付けは極めて重要ですし、このブログではそちらの重要性をアピールしてきましたが、それもお店やオーナー、スタッフの技量や拘りが十分に発揮できることを前提としてのもの。

    長く続けていれば、良い状態の時もそうでない時もあるはずですが、それでも、クリエイターとしての美意識や「自分はこうなんだ、これで行くんだ」という自信もしくは確信を感じたいと思うのは私だけでは無い筈です。

    安易に妥協せず、自店のホームページには自分の拘り以上のものを詰め込む気持ちでWeb制作業者と真剣に向き合って欲しいと思います。