2010年6月9日水曜日

レストランの経営戦略とその効果(株式会社ひらまつ編~その1)

自分がお手伝いしたお店のことなら大体は把握しているつもりですが、それも契約期間内での話ですし、ブログで公にお話しできる内容には具体性が乏しくなってしまいます。

ということで、「そとの人()が公開されている無料情報からどこまでレストラン経営戦略とその効果を把握できるか?」にチャレンジしてみようと思い、このエントリーを書き始めました。

このブログ全体の文脈からすれば、アクセス解析と店舗オペレーションデータの分析など踏まえて書きたいところですが、これらをすっ飛ばすわけですから、あくまでも「感想」とか公開されている情報の再紹介といったレベルで終わる可能性が大ですが・・・とにかく頑張ってみます。

※経営者の方にとっては大きなお世話どころか事前にお断りもせず申し訳ありませんが、内部情報や巷の噂は一切含まない内容であることをお約束しますので、ご了承ください。

第1回目は恐れ多くも、クオリティレストランの勝ち組である(?)、「株式会社ひらまつ」を対象にして始めます。
  • 株式会社ひらまつ(IR情報はこちら)とは?
    • 1982年にオープンした西麻布「ひらまつ亭」に端を発し、フランス料理とイタリア料理を中心にしたレストランを経営。94年に株式会社化、2003年にジャスダック、2004年に東証2部に上場。
    • 株価:\83,400(2010/6/8 12:42時点)
    • 従業員数:518名(2009年9月末現在)
    • 売上高:101億円(2009年9月期)
    • 経常利益:10.37億円(2009年9月期)
    • 保有ブランド/店舗数
      • レストランひらまつ(ミシュラン東京☆):5店舗
      • リストランテASO(ミシュラン東京☆☆):5店舗
      • ポール・ボキューズ:8店舗
      • エーベルラン:2店舗
      • プールセル:1店舗
      • D&D LONDON:2店舗
      • その他(カフェ):4店舗           ・・・など

※お会いするレストラン関係者の方にはいつも申し上げるのですが、上場企業のIR情報はいつでも見られるのでご覧になることをお薦めします。

リーマンショックこの不況下において、非常に素晴らしい業績をあげています。
つい先日も金沢市に「ジャルダン・ポール・ボキューズ」を開店させ、さらに来年秋には福岡市にリストランテASO2013年には大阪・中之島にD&D LONDONを除く全ブランドを集めたグランメゾンのオープンを予定しており、2015年には現在の売上の2倍となる200億円を目指しています。

この攻めの姿勢の背景は以下の情報から理解できます。
見る人によっては違う点に着目し学ぼうとする人もいるでしょうが、これらの情報から私が重要だと感じたポイントは以下の点です。
  1. 持続的な安定成長
    • ステークホルダー(顧客/株主/社員)に対する満足提供のために進化し続けていく
    • 収益を確実に確保できる物件のみを厳選し店舗展開
  2. 理念に基づくブランド戦略の徹底
    • ブランドマネージャーの露出強化など
  3. 確たるコアバリュー(料理)に基づくマーケティング・営業施策
    • 送客チャネルの拡充とCRM利用促進など
  4. お客に対する高い満足提供への拘り
    • 時代に沿った高価値の提供と全ての顧客接点において高品質な一貫性
  5. 徹底したコスト削減
    • 特に販管費
こういったことが高い精度で組織的に実行されたことがこの時代においても増収・増益を実現している事実に繋がっているのでしょう。

売上の40%以上を占めるウェディングについて見てみます。
人口動向や晩婚化といった傾向から婚礼数は減少傾向にあり、景気からの影響が強い消費イベントです(※1※2)。ひらまつは既に小人数での個室プランといった施策も出していますが、いわゆる披露宴と比べると1回あたりの売上は確実に落ちるので成約数を増やさなければ売上は維持できません。成約数を増やすということはそのための直接・間接のコスト・労力がかかりますから、より効率が重視されますね。

SEO対策の観点からひらまつのウェディング事業を見てみます。
Googleキーワードツールを使って「レストランウェディング」とそれに近いキーワードの月間検索ボリュームや検索上位に表示させるための競合度を確認すると・・・



  • ウェディング:823,000(!)
  • Wedding:673,000
  • レストランウェディング:33,100
  • レストランウエディング:40,500
キーワード検索における競合度は大変に高いということがわかります。このことから、ひらまつ自身はウェディング専業者とぶつかる戦略は採らずに、「レストランウェディング」というキーワードでの勝負を挑むはずです。そしてウェディングビジネスの消費主体が女性であることを考えれば、国内の検索エンジン利用シェアが高く、女性ユーザーが多いYahooで「レストランウェディング」の事業主としてのひらまつをアピールする、と・・・結果は以下の通りです。
この結果を見れば、見事な選択と集中ぶりだと思いませんか。クリック広告に多少の投資はしているかもしれませんが、限られた販管費の中で十分な効果を得ていると推察します(なにしろ、年間の成約数は順調に増えていて、見学に来てくれたカップルの40%以上がひらまつでウェディングイベントをやるわけですから)。

ひらまつにとっては、自店のHPのSEO対策だけがネット上でのマーケティング活動ではありません。数々のブライダルエージェントも営業チャネルとして機能していることを考えれば、しばらくの間はひらまつは日本随一のクオリティレストラン兼レストランウェディングの事業主の地位で在り続けるのではないでしょうか。しかも、レストランの一般利用と異なり、ウェディングは事前にスケジュールが厳密に決まりますから、1日に何組も披露宴があるようなハイシーズンでは通常のレストラン業態では達し得ない坪効率、1日あたりの売上を実現するのかも・・・うーん、ひらまつ恐るべし。

後日に続きます。

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