2010年10月12日火曜日

今の消費者が求めるものを見つけるために

バブルの盛り、西武百貨店向けに糸井重里氏作が「欲しいものが欲しいわ」というのCMコピーを書きました。

残業手当が満額支払われ給与も賞与も、個々人の成果以上(?)に稼いでいたであろうバブル時期、欲望に任せてモノを買っても何か満たされていない消費者の様を鋭くえぐった名コピーと言われます。

考えてみれば、高度成長期以降、日本は常に過渡期と言われていたような気がします。
その時々で捉えられ方・取り上げられ方は多少異なっても、この二十数年、いつも満たされていないが故に常に自分にとって新しい何かを探し続けているのではないでしょうか。

それは「より安くて良いもの」であったり、「精神的な満足を満たす何か」であったりという具合で。不況下においても、それに対する小規模な反作用・・・いわゆる節約疲れも必ず起こってきたような気もします。

例えば1995年に端を発したワインブームなどは?
4月には1ドル79.75円という史上最高値を付け、景気としてはどん底を味わっていました。ところが、田崎真也氏が世界最優秀ソムリエの称号を得た途端に、業界からの仕掛けに市場は見事に呼応しました(最大の功労者はBRUTUSでしょうか?)。

バブル時に最盛期を極めたファッション関連に興味を持っていた人が「モノを買う」という単純な行動に満足しなくなった結果・・・
  • ワインを買って⇒飲む(ファッションがワインに変わっただけ)⇒一緒に飲んで、周囲の人と楽しさを共有する(体験型エンターティメント)ツールとして
  • 「飲食」という日常の行動を深掘りする機会として(従来に無かった日常の変化)
  • 外食 = バブル時代に磨きあげたファッションセンスをご披露するハレの場としてレストランでワインを飲む(ファッションと飲食、そしてコミュニケーションによる楽しみ)
など、外食を中心とした総合的&体験型のエンターティメントへのシフトするきっかけの1つだったような気もします。

しかしながら、今のクオリティ・レストラン業界/ワイン業界の低迷ぶりを見ると、そうなった主たる要因は外部に存在するとしても、消費者からの反作用が起きていないですし、実際のところ業界側(メディア含めて)からは特に何も仕掛けていないということではないかと思います。

嗜好性やトレンド性向の強いビジネスでは、先ずニーズありきというよりは市場への提案が直接のきっかけになる場合があります。ファッションビジネスにおいてはパリコレなどファッションショーやブローシャーを作って、個々のブランドからの提案、業界としての提案がはっきりと業界内だけでなく市場に示されます。しかし、クオリティ・レストランの世界ではそういった動きがほとんど見られません。

ワイン業界では、先日開催されたDive to Wineや今度11月に開催されるFestivinなど、インポーター~飲食店~消費者が一気通貫でコミュニケーションし、ニーズやシーズを共有する機会が設けられるようになってきました。これらのイベントはうまく継続すれば「欲しいものが見つかる」力になる可能性を持っていると思います(そのために、うまく機能するようにPDCAサイクルを徹底できると良いのですが)。

最初から期待値が明確で選択眼が確立した成熟した消費者は以前に比べれば明らかに増えており、そういう客にはニーズを満たしてあげることが優先されるでしょうが、それだけでは市場は活性化しません。潜在的なニーズを発見したり、新たな気づきを提供するためのシーズによる提案・働きかけが適宜行われることが望ましいと思っています。

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