2010年11月12日金曜日

優先順位を決定する~その方法(その3)

このエントリーでは、以下の「2. 販売とマーケティング、どちらが重要?」について述べます。
  1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
  2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
  3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
  4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
飲食店ではマーケティングという概念自体があまり一般的では無いため、マーケティングというものを改めて整理してみます。

新作料理が定番化するプロセスはPDCAサイクルそのものだと思いませんか?
  1. 新作メニューを考える(Plan)
  2. 実際に作って、お客に販売する(Do)
  3. 食べてもらったお客の評判に耳を傾ける(Check)
  4. マイナーチェンジ(改善)を繰り返す(Act→Plan→Do→Check)
  5. お客の評価が向上し、注文が増え、最終的に定番メニューとして定着する
マーケティングを「売れる仕組み作り」と考えれば、PDCAを実行し、定番メニューを作る(=売れる商品を作る)ことはこの定番化プロセスは正にマーケティングの賜物と言えます。

で、販売は上記のとおり、2のDoの部分ですね。つまり、販売はマーケティングの一部であると考えられるわけです。こう言うと、一般企業の営業の人は「営業が売らなければ金入ってこないんだから会社は俺たちが支えているんだよ!」と怒られたりするのですけれど(笑)。実際の所、運転資金が潤沢でないことの多い、個人経営の飲食店では、この販売プロセスが無ければPDCAサイクルもマーケティングも成立しないので、販売は非常に重要であることは間違いありません。

これだけでもマーケティングは十分に広い領域をカバーしているわけですが、これはモノを売るプロセス面からの捉え方であるに過ぎませんし、「売れる仕組み作り」と定義として完結してしまうには問題があります。様々な書見から、以下の3項目を満たすものがマーケティングの定義として適していると考えます。
  • 顧客を起点にした売れる仕組み作り
  • 研究、開発、製造、人事、財務、営業などの経営を構成する各機能をコントロール
  • 経営者の理念や経営の目的を表現する手段
ITを含め、マーケティングを図で表すと以下のような感じかと。

※何かの本を元に私がアップデートしたものです
プロセスとしての販売・マーケティングではなく、機能としての位置付けも加味するとマーケティングは非常に広い領域をカバーしているということです。上図の研究、開発、製造、人事・・・といった各機能はマーケティングという概念に基づき、相互に関連しながら並行して実行することで組織が経営目標を達成に近づくことが出来るようになります(各機能がシリアルにしか動かないとすれば、組織を構成する意味がありませんよね)


例えば、ある高額商品を売るために必要なスキルセットを確認し人材を確保するのは人事の仕事ですが、そのベースに「売れる仕組み作り」に必要な人材確保、と捉える必要がありますし、財務・会計においても安定的にモノを売るバックボーンとして、毎月の運転資金の確保や支払いサイトなどを調整しなければならない、ということです。

尤も、個人経営の飲食店では研究、開発、製造、人事・・・の全て役割ををオーナーや店長がこなさねばならないわけで、工数を考えると、必ずしも全ての機能・役割が同時進行するとも限らないのが難しいところです。


これらを踏まえて、結論です。


販売とマーケティング、どちらが重要? という質問に対しては、組織内でマーケティングのなんたるかがきちんと理解されており、その上で、ということであれば販売の方に注力して良い筈。マーケティングを単なる広告とかりサーチといった程度にしか理解していない場合は、まずはマーケティングに対する正しい理解が重要。


優等生的な回答としては「どっちも重要」だけど、影響範囲の広さ・深さ、経営のベースにあるべきもの、という観点から見ればマーケティングの重要さは明らかでしょう。

2 件のコメント:

  1. 一般の会社の営業はマーケティングを理解していないので、基本的に「マーケティングを単なる広告とかりサーチ」と考えている人が多いですね。
    そこでとても苦労するわけですけど。

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  2. Mitsuoさん、コメントありがとうございます。
    おっしゃる通り、営業担当者がマーケティングの機能・役割を理解していない場合が多いですね。
    個人的には入社時研修でこういった基本を教えないことに依存する割合が高いように思っています。それが経営者自身がマーケティングに対する理解が無いことに由来する場合、改善までの期間が長くなる傾向がありますね。

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