2010年11月25日木曜日

優先順位を決定する~その方法(その4)


今回は以下の3.について述べてみます。
  1. 今季目標と中長期目標のどちらの実行を優先しますか?
  2. 販売とマーケティング、どちらが重要?
  3. クレームユーザーとリピートユーザー、どちらが重要?
  4. 店のオーナーからのコスト削減指示と常連顧客からのトリュフや珍しいジビエを使ったスペシャルな料理を作って欲しいという依頼・・・どちらを優先するか?
ただし、一意に「これが一番重要なのだ!」と割り切れるものではありません。最後まで読んでいただくことで、自分のお店がお客とどのように接していくべきかを再考するきっかけになればと思っています。


さて本論です。
仕事の優先順位を決定する方法論として、重要度と緊急度の2つの視点からのクロス分析があります。具体的には以下のようなマトリクスを使います。


緊急度
高い 低い
重要度 高い (A) (B)
低い (C) (D)
  • 重要度も緊急度も高い - (A)
    • 問題と危機の両方がある
      • クレーム客への対応は正にこれ。
    • 営業時間中のお客様へのサービスもここに当てはまる
    • ただし、ここに当てはまる仕事に集中し過ぎると、それに振り回されてしまう
  • 重要度は高いが緊急度は高くない - (B)
    • お店の経営に例えれば、遠くない未来を左右すること
      • コンセプトの見直し、スタッフの教育、各種PDCAの定着など
      • 何かと先送りにされがちで、結果が出るまでに時間がかかることが多い
    • 問題の根本に関わる活動であることが多い
    • ここに時間を投資することで問題発生を未然に防ぎ、大きな成果を得ることが出来る
  • 重要度は低いが緊急度は高い - (C)
    • 電話対応や届いたメールへの返信などをイメージすると良い
    • とりあえず対応しなければならないが、重要度は内容確認後に判断
  • 重要度も緊急度も低い - (D)
    • やる必要の無い作業であり、かける時間を早急に最小化すべき
一般的に(A)の仕事は言葉は悪いですが「お尻に火が点いている状態」なので、何とかその場を凌ぎ切るものです。(C)も軽いものであることが多いので、何とかクリアできてしまうものです。


問題は(B)です。(A)や(C)にかまけて(B)をやらないでいると、気が付いたときには大きな問題を抱えてしまうことがあるので注意が必要です。
(D)に執心し、必要以上の時間を割くスタッフ(もしくはオーナー)は論外です。


ということで、(B)への取り組みが非常に重要であることを前提として、話を進めていきます。


一般的に客に重み付けをする方法としてRFM分析があります。
  • Recency(最終来店日)
  • Frequency(来店頻度
  • Monetary(累積購買金額)
この3つの指標毎にお客をセグメント分けするものです。以下はそれぞれの指標を5段階で分けたサンプルです。

Recency


(最終来店日)
Frequency


(来店頻度)
Monetary


(累積購買金額)
Level 5 最終来店日が
30日以内
1か月毎 10万円以上
4 最終来店日が
31~90日以内
3か月毎 5~10万円未満
3 91~180日以内 半年毎 3~5万円未満
2 181日~1年以内 年に1度 1~3万円未満
1 1年以上前 それ以上 1万円未満


例えば、R=5, F=5, M=5に分類されるお客様はお店にとって優良客と呼べるかもしれませんが、R=1,F=1,M=5はどうでしょう? R=1,F=1,M=1はお客と呼ぶこともできないかもしれません。


このようにお店との関係をRFMという指標からお客を分類し、それぞれに見合ったアクションを起こす手法・考え方が普及しています。具体的にアクションとは以下のようなことを指すでしょう。
  • 集客施策(時候のDMやメルマガ送付を含む
  • 予約受付
  • 現場でのサービス
  • ソーシャルメディアその他でのコミュニケーション
  • 御礼/お詫び・・・など
これらのアクションを通して、お客との関係を深化させ、LTV(顧客生涯価値)や売上を最大化させるのがこの分析の主旨なり目的です。

しかし、こちらの記事にもありますように、RFM分析は「個」客に着目した分析では無く、定めた条件でお客をランク分けをしただけのものと言えます。逆に、ランク分けの条件に適合しなくとも、ちょっとした働きかけで優良客となる可能性のあるお客が居る場合もありますので、必ずしもRFMといった指標に拘らず自店の特性に合った指標でお客を分類し、最適なアプローチを目指せば良いのです。


しかし、そもそも、顧客管理がかなり高いレベルで行われないとRFM分析はできません。どうにか分析できたとしても、その結果が活かすこと(=各顧客セグメント毎への有効なサービス提供の検討・実施に至らない)は困難です。今さらながら、顧客管理がきちんと為されているかどうかが非常に重要なのです。


もう少しこの点を掘り下げてみましょう。


※クリックで拡大できます
上図はAIDMAAISASを説明する際によく使われる漏斗(ファネル)で表現される購買に至るまでの心理状態の遷移や集客モデルを飲食店(や実店舗型商店)でのそれに合うように独自にモディファイしたものです(そんなエラそうなものでも無いですが・・・)。


従来、AIDMAやAISASの理論の中では、PRやコミュニケーションの目的は「購買を促すこと」だったと思います。確かにそれは短期的な目的として間違っていませんが、マーケティングの定義を「中長期的に売れる仕組みを作ること」と考えている私は「常連客の増加による集客・売上の安定化」を目的とした図にしてみたわけです。


最初のゴールは未訪客を来店に導くことです。ですが、「常連客の増加による集客・売上の安定化」をセカンド・ゴール(もしくは最終ゴール)とするならば、初めて来店してくれたからといってただ喜んではいられません。言うまでも無いことですが、実際に来店いただいた時間はFace to Faceでコミュニケーションできて、精一杯のサービスができる最良の集客プロセスの現場です。予約時、もしくは来店時に、来ていただいたお客様の顧客情報などを取得するタイミングもここしかありません。

しかし、繰り返しになりますが、多くの個人経営店では顧客情報の収集・管理・活用が十分に出来ていません。一般的には新規客の獲得が難しいと言われていますが、この顧客情報の管理の不備により、リピート客獲得の方が難しいのではないか(もしくは店によってはリピートのためのサービスをする気が無いのではないか)とさえ思う場合があります。

このような状態になっている原因は、顧客管理が本エントリーの一番上の表中の(B)の象限(重要度は高いが、緊急度は低い)に当てはめているからではないでしょうか。

顧客管理ができていないということは、新規客/リピート客/常連/クレーム客に関わらず、実は「個」客を軽視し、サービスの重要性や価値を認識できていない可能性が高いと思われます。これらの分類はどれが重要かを判断するためのものでは無く、「個」客が上記のプロセス上、どの位置に居るかを判断し、プロセスに応じて最適なサービスを提供することで次の来店を促すためのものと考えるべきです。その考え方に基づけば、クレーム客に対して、その場しのぎの対応をするのはタブーなことは言うまでもありません。

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