2010年7月12日月曜日

クオリティ・レストランにとってのコンセプトとは

考えてみれば、「クオリティ・レストランにはすべからくコンセプトが必要だ!」、ということを伝えるためのこのエントリーがまずコンセプチュアルである必要がありますね(汗)。

5W2Hで考えると、まず最初にWhat(何を)から話していくのが正しい手順だと思います。ということで「コンセプトとは何か?」を出来る限り、シンプルに述べてみようと思います。ただし、「コンセプト」は多くの側面を持っており、一言で表現するとかえって誤解を生む元となるため、丁寧さも失わないよう気をつけていきます。


コンセプチュアルであることの前提
企業やお店が、自身と関係する人/企業などと繋がるための根本価値や意味を、共有可能な状態になっていること。


低成長時代で、しかも多くの市場が成熟・飽和した現在においては、多くの場合、消費者側が消費の主導権を持っており、ニーズ中心/消費者目線に立ったビジネス(マーケット・イン型)の方が成り立ち易いと言われていますが本当でしょうか?


消費者目線という言葉自体もなかなか難しいものです。世の中のトレンドを表面的に捉えただけの提案(例えば、低価格路線への安易なシフトなど)は確かに短期的には価値ある場合もありますが、中長期的に見ると、時代性との不整合を感じたり、そもそも論に導かれてしまう場合もあると思いませんか。


私が考える消費者目線というのは、消費者やトレンドに安易にすり寄ったり追従することではなく、物の本質を捉えた上で時代性を反映した商品・サービスを提案することです。


泡モノワインで例を挙げてみます。
シャンパーニュというお酒は随分と高価なものになってしまいました。プレスティージ・クラスは言うに及ばず、ちょっと拘ったレコルタン・マニピュランのスタンダードクラスのものでも都内のワインバーでグラスで飲むと1杯1,600~2,000円くらいするのではないかと思います。1回の外食費用が仮に8,000円だとすると、その1/5~1/4をグラス・シャンパーニュが占めるというのは今の消費者には厳しい場合が増えたように思います。


そこで、より安価なスパークリングを代品として採用する案が浮上してくるわけですが、そのシフトに際しても、ただ安いから、という理由で採用するならNG。極端な言い方をすれば、「シャンパーニュの代品」という考え方自体が後ろ向きです。


例えば、ステファン・ティソクレマン・デュ・ジュラというスパークリングがあります。


ワインのプロやブランド指向が強くないワイン好きの人にとってはシャンパーニュの代品という位置づけではなく、ジュラという土地をパワフルかつ洗練した形で表現した個性の強い地酒として認知され始めています。単なる新商品として提案されただけでなく、「シャンパーニュ以外にも高い品質の発泡酒はある」という気づきを消費者に提供し、伝統的な地場品種を使い、オリジナリティと革新性を加えたことで発泡酒に新たな価値観を加えるところまで踏み込んでいます。このように高品質の発泡ワインは、発泡酒=シャンパーニュと考えている従来客の視野を拡げ、高価ゆえシャンパーニュに手が出なかった(見込み)客を開拓する可能性すら持っていると考えます(あくまでも可能性ですが)。


このようなティソのクレマンの本質を理解し、それを消費者に漏れなく伝えることができる店とそうでない店・・・
同じ商品を同じ値段で提供する場合、どちらの店が消費者目線であるか、は誰の目からも明らかではないでしょうか。消費者目線には、消費者が価値を感じるであろうモノ・コトを察し、先んじて提供するという視点だけでは不足で、気づきや新たな価値感・視点を提供する視点が必要です。


この場合、ティソのクレマンを扱う業者やお店が、内外の関係者(消費者含む)に対して、ただ「美味しい」や「安い」だけでなく、消費者目線を持って、美味しさの在り様、商品の背景、根源価値がより共有し易い形に形態化できれば、よりコンセプチュアルな商品として市場に認知される可能性はより高まります。


自動車のカタログスペックに相当するようなデータは、このワインについてもそこそこ公開・共有されているものの、味わいや香りといった主観的な要素を相互理解するための共通のコミュニケーション基盤がそもそも確立しておらず、その観点から共通認識を持つようになるにはまだまだ時間も努力が必要でしょう。しかし、表現手段と伝達経路は明らかに進化・拡張してきているので、前向きに試行錯誤を重ねていくべきでしょう。


伝えるべきアイデア・理念を持ち、消費者目線をもって関係者(消費者含む)と共有できるよう形態化し、店内でそれを周知・徹底した結果、商品・サービスとして提供されることが、クオリティ・レストランをコンセプチュアルに運営するための前提条件だと述べておきます。



To Be Continued

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