2010年7月27日火曜日

【ワインねた】日本のワイン業界/市場の課題を私なりに整理してみました

※コンセプト作りのトピックは次回、また再開します。
かつてのブルータスでワイン特集の際にはよく日本のワイン文化の歴史が書かれていましたね。

ボージョレ・ブーム、シャブリ・ブーム(?)、田崎さん優勝とスター・ソムリエの登場、ロバート・パーカー・ブーム、ワイン専門雑誌の相次ぐ創刊、自然派ワインブーム、神の雫ブーム・・・色々ありました。これらのブームは日本のワイン市場を刺激し、業者も消費者も一定以上の恩恵を受けてきました。私もワイン好きの1人として、これらの出来事があったからこそ出会えたワイン、出会えた人が少なからずあります。

上記のような日本のワイン市場を刺激した出来事の1つ1つは短期的には効果があったでしょうが、全体を振り返り、今後を睨むとどうでしょうか? 多少、これまでのワイン業界に対して批判的なことを書くことになるでしょうが、愛ゆえということでご容赦願います。


結論から言うと、日本のワイン市場は立体的な拡がり・進化をしていないし、このままではそういう動きは期待できない、と危惧しています。

上の図はこの20数年くらい間に日本でどういうワインが話題になったり、市場定着したのかなどを私なりに時系列で並べてみたものです。漏れているものや余計なものもあるかもしれませんので、異論のある方はご連絡くださいませ。


で、各事象についての感想・考察を自分なりに以下に述べてみます。
  • 未知のものへの興味が膨らんだ時に、そのカテゴリーのワインの消費が最大化されるが、長続きしない場合が多い。
  • ブランド力のある、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュですら、それぞれのカテゴリーについて、消費者に新たな視点を投げかけることがほとんど出来ていない(シャンパーニュについては、大手メゾン製とその対立軸としてのRMの共存に成功した、と言えるかも)。
  • ボルドー、ブルゴーニュについては、新たな銘柄・生産者が出てきたとしても、従来からある価値の焼き直し程度。ボルドー右岸のガレージワインも完全に市場を縮小させた。ワインの価値を本質的に向上させたり、別の視点を与えたわけではないのだから・・・ほとんどは、ただトップグループに追従し、無闇に濃いメルローを作っただけ。
  • 自然派ワインについては、ガストロノミー向きのそれら(パカレやシャソルネィなど)の市場価値は相当に下落しているはず。もう少し気楽な自然派ワインについては、ビストロやワインバーなどを中心に国を問わず市場定着してきている(自然派ワインの二極化)。これは従来に無かった消費動向と言えるように思う(消費者の多様化がここでは進んだと言えるかも)。
  • 各ワイン雑誌のプロモーションが効いたのかどうかは知らないが、これまで以上に日本製ワイン(特に小規模生産者)の注目度が上がっているが、長期的かつ本質的な視点から成長を考えないと「かつて誰かが通ってきた道」を通ることになりそう。
  • 全体を通して見ると、日本のワイン消費は「とても移り気な消費者」が「特定のカテゴリーのワインをちょっとつまんではすぐ飽きて(わかったような気になって)、次のカテゴリーのものを求める」ことを繰り返したことでここまで成り立ってきたように見えるが、そのモデルには限界が来ている。少なくとも目先が変わっただけで市場も消費者もそれほど成長していない。
  • ワイン原体験としてボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュを経験した人がまだ消費主力であり、他のカテゴリーのワインに目を向けさせようとしても、結局、それらとの比較を通じてしか提案できない流通業者が多いため、結果として消費者を特定のカテゴリーに縛ってしまう。消費者の自由は奪われ、流通業者も自分が掘った穴から出られない(=マイナーエリアのワインが売れ残る)でいるように見える。
  • 評価の高いワインは売り易いが、多くのワインが90点前後に集中する現在、個性の違いを訴求しないと消費者にはどれも一緒に見える。
こんな感じでしょうか。
丸めて言うと、ワイン市場を成長させるには単に目新しいものを提供するだけじゃダメ。成長の軸として「新製品を市場投入する」だけでは市場自体が不安定で脆弱なままです。下の図はあくまでもイメージですが、今の日本のワイン市場はたぶんこんな形です。

これまでのように特定の成長軸だけに依った市場成長はあり得ません。バランスが悪く、他の成長時期での発展を試みてもそれを支える土台が無いため、容積を増やすことができません。この図では「新しい商品」と「消費者の成長と自律」の両軸で発展しなければ「新たな視点」の軸を発展させていくことができない(土台が無いため)ことがわかります。

これに対し、新たな視点・価値感を消費者に与えたり、消費者のレベルアップを促し、自律性を高めることで消費を構成する要素が多面化し、さらなる成長の基盤となっていくはずです。

ワイン関係業者が速やかに中長期的な市場成長戦略を整備することを期待しています。

3 件のコメント:

  1. おしゃれ洗濯先生、こんばんは。

    浜ちゃんでございます。

    今や居酒屋にもワイン(私の飲めるものではないことが多いですが)があり、日本人の誰でもワインとかシャンパンという言葉を口にするけれど、なぜ定着しないんでしょうか?

    今までの事象を見てみると、デパートが売り上げが上がらない時にすぐにバーゲンをしますが、それに似ているような気がしてなりません。

    おっしゃるとおり、中長期の戦略がないということだと思います。

    ワインの勉強というと、ソムリエもどきのティスティングの勉強ばかりになってしまうし、神の雫と言えども普通の人には何を言っているかわからず、「やっぱりワインって難しいね!」ってなってしまっているのではないでしょうか?

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  3. 浜ちゃん、こんばんは!
    コメントありがとうございます。

    ワインの「知識」ってちょっと誤解されている部分が大きいと思うのです。ソムリエ試験の一部に出てくるようなアメリカ横断クイズ的な「こんなん知ってるぞ、すごいやろ」みたいな知識は無用ですよね。

    そうじゃなくて、ワインの善し悪しを判断する前提として醸造的に安定しているワインであるかどうか、などをジャッジし、そのスキルを共有することが消費者育成の大きなポイントだと思っています。

    だって、ワイン業界人間でもブレタノマイセスがどういう原因で発生して、そういう香りになるか、それを防ぐにはどうすべきか、といった基本的な知識すら十分に持ち合わせていない人がいるわけですから、そんな人たちに消費者を育てられるはずが無いと思うのです。本質的なテイスティング能力の向上無くして日本のワイン市場は収縮の一途を歩むのでは、と危惧します。

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