2010年7月14日水曜日

クオリティ・レストランにとってのコンセプトとは(その2)

ここで、「何故、クオリティ・レストランにコンセプトが必要なのか?」を明らかにしておきます。

一貫性(Consistency)と品質確保のため
クオリティ・レストランにおいては料理に使う食材に始まり、調理もサービスも一定以上のレベルにあることが前提なわけで、内外装やオペレーション全てを含めた一貫性こそが店の品質と個性を形成するとさえ信じています。

以前のエントリーに以下の内容を記載しました。


>・料理:90%
>・内装・雰囲気:70%
>・サービス:80%
>ここでいうパーセンテージの意味は、ブランドバリューやコンセプトが各要素にどの程度具体的に反映されているか、ということです。上記の例であれば、トータルでは・・・
>0.9(料理) x 0.7(内装・雰囲気) x 0.8(サービス) = 0.504 = 50.4%



上記の例の50.4%という数値はお店のブランド価値・個性であり、そのお店の品質を示すものだと考えます。この考え方を先に進めると、どこのお店にあるような定番料理であっても、各項目で他店よりも頭一つ以上抜きんでていれば総合的にはそれなりの差になってくることがわかります。以下の店Aと店Bでは各項目では10%ずつの差しかありませんが、総合的(積算後の値)には17%の違いになっています。

店A 店B
料理 80% 70%
内装・雰囲気 80% 70%
サービス 80% 70%
積算後 51% 34%

一貫性を表すためには各要素は独立しているようで、実は深く関連し合っているため掛け算で考える方が適していると考えています(掛け算の理由はこちらこちらも参考になるでしょう)。

「レストランは総合芸術だ」と言う人もいます。それに近い考え方を持っている経営者の方であれば、この考え方は納得されると思います。「ウチはそんな店じゃない」と思っている経営者の方も試してみてください。そして店の一貫性や品質を維持するためにはコンセプトがこれらの各要素に沁み渡っている必要があると認識いただければ幸いです。

【優先順位/意思決定のための基準】
明確で共有されたコンセプトは繁忙期の顧客対応上の優先順位決定や経営上の意志決定時の基準/拠り所になり、業務のスピード向上にも寄与するからです。次に記載している「いちいち上司に確認せずともスタッフが自立して判断し、行動する」ための基準とも言えます。

【スタッフの自立性と現場対応力向上のため】
店のスタッフにコンセプトが確立・共有されていない場合、顧客の満足度を上げ、リピーターになってもらえるチャンスを失ったり、トラブルやイレギュラーバウンドの発生頻度を増やす可能性すらあります。経営者の意図と異なる対応をする場合が多いと、その都度、注意しなければならないなどのオペレーション・ロスも発生します。

この負のスパイラルはコンセプトをしっかりと固め、共有することで回避できるはずです。もちろん、コンセプトに沿った行動ができるようなスタッフを採用・教育することが重要ですが、優秀なスタッフの安定確保にも繋がります。

【ブランド確立(Branding)のため】
コンセプトに基づく一貫性のある経営、内外装、料理、サービス、コミュニケーション、マーケティング活動(Webサイト、ブログ、ソーシャル・メディアの運用含む)などを行うことで店のブランドを確立することができます。なお、言うまでもありませんが、ブランドという言葉はファッションやコスメティックだけの話でも無ければ経営規模の大小も問いません。 ブランド確立は顧客からのロイヤリティを高め、安定した集客と価格設定にも寄与します。

なお、コンセプト作りは新規開店の前に確立できればベストですが、後から作り上げていくことも可能なものです。きっと、漠然としながらも拘って積み上げてきたことがあると思います。そういったことを整理し、コンセプトとは何か、何故それが必要なのかを振り返って、改めてコンセプトをまとめる方向に舵を切っていただきたいと思います。

次のエントリーではコンセプトをどうやって作れば良いのか、そのプロセスを整理してみます。

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